子どもたちの発想力と創造力を育む、安藤忠雄氏設計の図書施設「こども本の森 中之島」(大阪市北区)がオープンする。カラフルな表紙の本が3フロアの壁面にズラリと並び、文字通り「本の森」に包まれている感覚が味わえる。当初3月1日の開館を予定していたが、新型コロナウイルス感染防止のため当面の延期が決まっている。
「ジャンルにこだわらず、児童書以外の本も幅広く集めた。さまざまな読書体験を通じて、想像をふくらませて欲しい」と語るのは、BACH代表のブックディレクター幅允孝氏だ。キラキラ光っている本、上質な文章、ハッとする一節、心に残る言葉を持つ1冊1冊を厳選し集まった18,000冊あまりの蔵書を、「自然と遊ぼう」「動物が好きな人へ」など子ども目線の12のテーマに分類。自分の興味のある分野へすっと入れるよう配架に工夫した。
メインターゲットは乳幼児から中学生だが、中には大人でも読み応えのあるような書籍も並ぶ。
スタッフの1人は、母親と2人で来館した就学前の子どもが、画像が多用されたアート本を手に取った話をしてくれた。まだ早いんじゃないのと声をかける母親も気にせず、子どもは1ページ1ページを夢中でめくっていたという。「自由に、好きなように本とたわむれる姿を見て、私もうれしくなった。これが楽しい読書体験になって本好きの子が1人でも増えてくれたら」と語る。
ユニークなのは図書施設にもかかわらず本の貸し出しがない代わりに、読みたい本を1人1冊、中之島公園内に持ち出せるシステムだ。スタッフに声をかけ、閉館までに返却する約束をして袋に入れ持ち出す。そばには堂島川と土佐堀川が流れ、近くにばら園や東洋陶磁美術館、中之島中央公会堂もある。「自然と文化の中心であるこの環境で、次世代を担う子どもたちに考える力や生きる力を養って欲しい」と安藤氏も期待を寄せる。
時間に追われる現代は、すぐに集中できるゲームやSNSに興味が向きがちで、内容に入っていくまでに時間がかかる読書には不向きな環境だ。しかし幅氏は、読書は必ず心の栄養になると強調する。「ここには、読書に没入していくあなたを邪魔するものはありません。『こども本の森 中之島』で、自分の心に刺さる言葉を探しに来て欲しい」と呼びかけた。
※新型コロナウイルス感染防止のため当面の開館延期が決まっている。