まさか…人気の裸足教育に、思わぬ落とし穴があったなんて 悲劇は小学校から始まった

山本 美和 山本 美和

 子育てには、思いもよらない落とし穴があったりする。

 それは、本当に予想だにしないことだったりするのだ。

 うちの場合は、「靴下」だった。

 2歳のときから保育園でお世話になっていたのだが、その保育園は裸足で下駄を履く保育を推奨していた。土踏まずをきちんと形成するために、裸足と下駄はいいと言われている。

 たしかに、うちの子どもたちも4歳の時点で土踏まずがきちんと出来上がっていた。

 物心がついてからずっと裸足と下駄で生活してきた子どもたちは、保育園がお休みのときも、基本的には裸足と下駄。ちょっと気合を入れてお出かけするときだけ、特別に靴下と運動靴を履かせていた。それでなんの問題もなかった。

 ところが、小学校に上がって入学式を終え、通学が始まった時それは突然始まってしまった。

 「靴下が履けない」というのだ。「??」

 靴下は筒状に編み込んでいって、ちょうどつま先に当たる部分を横に縫い合わせて袋状にする。その縫い目が気になって、靴下を履き続けることができないというのだ。Tシャツの首の後ろについているタグが気になることがある。これは、タグを切ってしまえば問題ない。でも、靴下の場合、縫い目をほどいてしまうと靴下でなくなってしまう。

 その日から毎朝、靴下を履いては脱ぎ、履いては脱ぎ、とりあえず納得できる靴下がみつかるまで繰り返すという作業が繰り広げられた。当然朝は時間がなく、本人たちも半泣きになりながら納得できる1足を探すのだ。これが毎朝だと、当然子どもも母親も疲弊してくる。できることといえば、縫い目が気にならないであろう靴下を探してくること。あとは、ひたすら子どもをなだめるしかない。

 最初は、敏感肌向けの靴下や、肌に優しいと表記されている靴下を買い集めてみたが、肌触りは良くても「縫い目」のゴロゴロはやはり気になる。どれもお眼鏡に叶うものは出てこなかった。靴下あつめと並行して、縫い目に慣らす作戦として風呂上がりの機嫌のいいときに翌日の靴下を履かせておくという方法も試してみた。ところがこれも作戦失敗。そもそも裸足でいたい子どもたちなのだから仕方ない。

 入学式も、その後の学校生活に慣れるための短縮時間割のときも、子どもたちにとっては「特別」だったから我慢できた靴下が、学校が特別でなくなったときから我慢できなくなったらしい。

 朝の儀式と靴下探しは、6月頃まで続いた。しかし、だんだん「靴下が気持ち悪い」と言わなくなってきた。何度か洗濯して靴下がくたっとなってきたことと、自分の中で納得できる何足かの靴下を見つけることができたからのようだった。「終わりがないのかも」と思っていたこの騒動は、ある日突然収束を迎えたのだ。今になって思えば、子育てってそんなことの連続かもしれない。ある日から、するっと手が離れる。といっても、全く何もなくなったわけではなく、未だに靴下選びはとても慎重に行っている。色やデザインよりもまず履き心地。でも、自分のじゃないから相変わらず手探りなのには変わりない。母は、意外なところで手間暇かけてるのだ。誰も気づいてないと思うけど。

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