はたして「コロナ不況」は来るのか テーマパーク、百貨店株などが下落

山本 学 山本 学

 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大が、景気に影響するとの警戒感が高まりつつある。感染拡大に警戒して政府は事実上、人が多く集まるイベントの中止を呼びかけた。休日も出歩く人の数が減り、中国など海外出張だけでなく、国内出張を見合わせる動きも一部で出ているようだ。一方で、サンリオピューロランド(東京都多摩市)などが休園を発表するなど、中国からの訪日外国人観光客が途絶えた影響も出つつある。長引くようなら経済活動が停滞しかねず、こうした「コロナ不況」への警戒感は株式市場にも表れている。

 加藤厚生労働相は18日に「大規模なイベントについて中止が必要という意見はなかった」と有識者の意見を紹介する一方で「主催者によって、適切にご判断いただくことになる」と述べた。ここで必要になる「適切な判断」を保守的に考えるなら、どうしてもイベントは中止ということになるだろう。実際、3月1日に予定されている東京マラソンは一般参加者が走らないという市民マラソン大会としては事実上の中止になり、驚いた人も多かっただろう。天皇誕生日の一般参賀も中止。神戸市内でも2月23日に予定されていた、新しくデザインされたラッピング電車の出発式が「自由参加の行事だから」ということで念のために中止になった。

  国内で感染が拡大することへの警戒感が、特に株価に顕著だったのはJR東海(証券コード9022)だろう。国内で感染者が東海道新幹線を利用して、東京から名古屋に出張していたと伝わったのは2月15日。これを受けて週明け17日からの1週間でJR東海は約5%下落した。JR東海の時価総額は4兆円強とあって、2000億円が平日の5日間で消えてしまった計算だ。JR東海は東海道新幹線の利用客が2月1〜19日の利用客が前年同期に比べて8%減少したとも伝わった。

 東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランド(4661)は、1月27日大きく下げて、下値を探る展開が続いている。大きく下げたのは、中国政府が国民の海外旅行を事実上禁止したタイミングだった。その後も株価が戻らないのは、短期的に解決する問題ではないとの見方が優勢であることを示唆する。訪日客需要の関連株では、南海電鉄(9044)や、ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開する共立メンテナンス(9616)といった、空港との主要交通機関やホテルなども下値を模索している。

 さらに厳しいのは百貨店株だ。美術品や呉服、宝飾品といった典型的な高額品が消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動で、需要が弱まっていた。それが回復しきらないうちに、免税品の売上高、つまり訪日客の購買が急速に落ち込んだ可能性があるというわけだ。新型コロナウイルスが注目されていなかった昨年末との比較では、2月21日までに三越伊勢丹ホールディングス(3099)の株価が20%下落。大丸松坂屋のJ・フロントリテイリング(3086)が16%下落、阪急阪神百貨店のエイチ・ツー・オー・リテイリング(8242)が23%下落、高島屋(8223)が11%下落と軒並み安になった。

 外需は不透明だが内需がなんとか支えて株高を維持--。といった昨年後半から期待された構図が崩れた形になる。2019年10~12月期の実質国内総生産(GDP、速報値)が年率換算では6.3%減と、急速に悪化したことを考えると、さらなる消費の冷え込みが日本経済にとって大きな打撃になるとの見立てができそうだ。

 しかし、暖かくなるとインフルエンザの患者数が減るように、新型コロナウイルスの影響も短期間で終息するならどうか。景気はもともと不透明感が強いにしても、下がった株は売り手が手じまうための買い戻しで、いったん上昇する可能性が高い。新型コロナウイルスを巡る報道は毎日トップを飾り、悲観的な先行き見通しに傾きがちだが、患者数はまだ国内でも100人強と、毎年数百万人がかかるインフルエンザよりも格段に少ない。現在の状況をマスコミの騒ぎすぎとみるかどうかは、判断の分かれるところかもしれない。

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