障害がある子供たちの日常に光を当てる 「放課後等デイサービス」の取り組みが映画に

黒川 裕生 黒川 裕生

障害がある子供たちの放課後や夏休み中の生活を支える「放課後等デイサービス」の草分け、東京都小平市の「ゆうやけ子どもクラブ」の日常を描いたドキュメンタリー映画「ゆうやけ子どもクラブ!」の上映が2月15日から、関西で始まる。事業所に何度も足を運び、子供たちの小さな変化や成長を見つめてきた井手洋子監督は「こういう取り組みがあることを多くの人に知ってもらうことで、障害の有無にかかわらず、少しでも生きやすい世の中になってほしい」と話す。

「ゆうやけ子どもクラブ」は1978年に誕生。現在は小平市内3カ所に事業所があり、知的障害や発達障害、自閉症などさまざまな障害を抱える小学生から高校生までの計70人ほどが会員になっている。映画は同クラブの40周年を記念し、村岡真治代表が井手監督に活動の様子を撮影するよう依頼したことがきっかけで制作された。

2012年には国の制度として「放課後等デイサービス」が始まった。現在は同クラブのような事業所が全国に1万3千カ所あり、利用者数は20万人に達しているという。だが井手監督は、同クラブを訪ねるまで放課後等デイサービスの存在を全く知らなかったそうだ。

「最初の頃は、とにかくわからないことだらけ。子供たちは急に怒ったり泣いたりするし、どう撮ればいいか悩みました。でもスタッフの皆さんが過去の活動記録を遡りながら、細かく丁寧に子供たちと向き合っているのを目の当たりにしたとき、事実をひとつずつ積み重ねていくドキュメンタリーの手法に似ていることに気づき、取材が面白くなりました」

たくさんいる子供たちの中から、カメラは音に敏感で自分のことをうまく表現できないカンちゃんや、積み木や電車に夢中で周りにとけ込もうとしないヒカリくんら数人に照準を定めていく。気持ちの不安定なガクくんを指導員がおんぶして散歩する姿を延々と写し続ける中盤の印象的なシーンには、子供の些細な変化にそっと寄り添う同クラブの姿勢がオーバーラップする。ずっと自分の世界にいたヒカリくんがダンスに興味を示し、ついに仲間の輪に入っていく瞬間もカメラは捉えている。

子供たちの日常や保護者の悩みを描きつつ、ささやかな希望を込めた井手監督。一方で、事業所を運営していくための資金繰りの大変さなど、制度の危うさにも触れている。

すでに公開された東京などでは、口コミで反響が広がっていったという。井手監督は「ひとりひとりが大切にされる社会こそが本来の多様性。映画を通じて子供たちの世界を純粋に楽しみながら、自分の中に差別や偏見の気持ちがないかあらためて見つめ直す機会にしてもらえたら嬉しい」と話している。

「ゆうやけ子どもクラブ!」は2月15日からシネ・ヌーヴォX、29日から元町映画館、3月7日から京都シネマで上映。

■公式サイト https://www.yuyake-kodomo-club.com/

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