清酒大手の月桂冠(京都市伏見区)が開発した日本酒テイストのノンアルコール飲料が、話題を集めている。大吟醸酒の風味や香りを再現しており、ツイッター上では「まじで酒」「お酒好きですが、これはめっちゃ美味(おい)しかった」と評判だ。そうと聞いては、左党として放っておけない。ヒットの秘密を探った。
昨年8月に発売した「スペシャルフリー」(245ミリリットル入り)。アルコール分0.00%、糖質ゼロをうたっており、ボトルのラベルには「大吟醸テイスト コクのある味わい」とある。
「おかげさまで、当社のオンラインショップで売れ筋上位に入っており、現在は増産態勢を敷いています」
そう話すのは、開発者の一人である月桂冠総合研究所製品開発課の村椿達哉さん(30)だ。当初予想を上回る売れ行きで、昨年末には品薄になったほどだという。
実は、月桂冠が日本酒テイストのノンアル飲料を出したのは今回が初めてではない。まず2014年に初代の「月桂冠フリー」を発売。15年にもカロリーゼロで健康志向を強めた2代目「月桂冠ニューフリー」を投入している。
いずれも、病気などの健康上の理由で日本酒が飲めなくなった人のため、普通酒の風味に近づけた商品だった。従来の清酒ファンには喜ばれたものの、「日本酒らしい苦みもあえて再現したため、『もっと飲みやすい方がいい』という評価もいただきました」(村椿さん)。
より多くの人に飲んでもらうためには何が必要か。折しも清酒市場では、吟醸酒や純米酒などの「特定名称酒」が人気を集めていた。フルーティーな味わいが受け入れられやすいとみた村椿さんらは、吟醸酒テイストの商品づくりを決意する。
「実は初代の商品を開発した傍らで、吟醸酒テイストのノンアル飲料も作り上げていたんです。製品化されずに『お蔵入り』していましたが、これに改良を加えて世に出すことになりました」
吟醸酒ならではのコクや甘みを作り出すため、添加するアミノ酸の種類や量を大幅に増やしたほか、香料メーカーと二人三脚で華やかな香りの再現にも取り組んだ。
「日本酒ならではの辛みや渋みを残しつつ、甘さやフルーティーさを作り出すことができました」
その結果、女性や若者にも広く受け入れられ、ツイッターで取り上げられるほどの人気を得るに至った。
ところで、ツイッターでは妊娠中や授乳中でも安心して飲めるという投稿が散見される。月桂冠の考えはというと、「妊産婦にお薦めしているわけではありません。これがきっかけで大量飲酒につながってはよくないですし」。広報担当者が戸惑い混じりに見解を述べた。飲酒と同様、自分の健康状態と相談しながらノンアル飲料を楽しんでもらいたいものだ。