紅茶、カフェラテ、ノンアルコールビールなど、続々と透明な食品が誕生している昨今。とうとう日本の食卓に欠かせない、あの調味料まで透明になりました。ずばり「透明醤油(しょうゆ)」!です。SNSでも「透き通っていて水みたい」「インスタ映え間違いなし」と、その見た目の美しさが大変話題になっています。なお、透明ブームに乗ったミーハーな商品かと思って味見をしてみると、偽りのない「醤油の味わい」の確かさに驚嘆します。開発の裏側を聞くと、そこには新しい市場を開拓しようと意気込む地方老舗メーカーの熱い思いがありました。
開発したのは、熊本市の醤油・調味料メーカー「フンドーダイ五葉」。創業150年を迎えるのにあわせ、開発・販売したそうです。化粧品のような美しい容器に入って販売されていることもあり、見た目はにわかに醤油とは想像できません。
いざ容器にそそいでみると…さらさらと流れ出る様子は、水やお酒のようです。刺し身をつけて食べてみようとすると、何か別のドレッシングを使っているような錯覚があり、とても不思議な感じです。ツイッターで投稿されていた「脳みそが混乱する」「やはり視覚情報は大事なのである」というフレーズが頭をよぎります。
しかし口に含むと…軽やかだけれどもしっかりとした香りと風味、そしてだし醤油のような甘みを感じます。そしてその味わいは、醤油だけで味見するより、ほかの食材と一緒にあわせたほうが、より引き立つ印象を受けました。それぞれの人の好みがあるとは思いますが、筆者は…冗談抜きで「おいしい!」と思いました。
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そんな商品について、同社の担当者にお話をお聞きしました。
ー醤油なのに透明だなんて。どうやって作っているのか、とても気になります。
「本醸造の濃口醤油を分離・精製し、味の調整をしています。一度醤油を作った後、加工をしているので、手間とコストがかかっています」
ー分離・精製とは具体的にどんな作業なのですか。
「以前取得していた製法に関する特許を応用するかたちで作成していますが…ちょっとブラックボックスです。開発には1年半ほどかかりました。試作は早めにできたのですが、透明さを保ちながら、醤油の風味を調整するのに苦労しています」
ーしかし…なぜ『透明』だったのでしょう。
「30代女性の開発担当者が、近ごろ透明な飲料が流行っていることから、弊社の設備と技術を駆使すれば透明な醤油を作れるのではないかと考えたためです」