飾らない魅力にあふれたオカン写真の数々。それは、高級レストランの料理や有名人とのツーショットなど、とかく「リア充」ぶりを誇示する写真があふれるSNS上で異彩を放った。
だからだろう。オカン写真を見た猛さんの知り合いが写真展を開こうと提案してきた。話はとんとん拍子で進み、ついに2017年5月、京都市内のギャラリーにオカン写真約50枚が並んだ。会場を訪れたオカンはあられもない姿を世にさらされて怒り出すかと思いきや、まさかの大喜び。友達にも喜々として自慢していたらしい。「テレビに映ったみたいな感じなんかな。子どもみたいに、はしゃいでた」
そんなオカンも、実は老老介護の日々を送っている。猛さんのオトンは、もう随分前から寝たきりで、介護が必要な状態が続いている。だから最近は猛さんが週3回ほど、近くの実家に寄り、父のおむつを替えたり、部屋の掃除をしたりしてデイサービスに送り出すのを手伝っている。
「朝寝てるとオカンから電話が掛かってきて『もう8時やでー』って、学校に遅れる子どもを起こすみたに言ってくる。思わずイラッとして『こっちは(世話を)やったってるのに』みたいな言葉を言ってしまう。でも、ほんまは、むしろ、やりたくてやっている寄りなんやけど、オカンから、やるべきことをやっていないみたいに言われると、ついムカッとしちゃう」
家族だからこそ、時に意に反することを口にしてしまうものだ。分かり合うことはそう簡単ではない。
それでも、猛さんにとってオカンは、やはり偉大なる存在でもある。
「介護って、やっぱり一緒に暮らしてる人が一番大変やと思うねん。だから、オカンは大変やと思う。俺なんか普段は別のとこで暮らしてて、ちょこっと手伝うぐらいやから、全然大したことあらへんよ」
それでも、決してへこまず、人生の苦しみも笑い飛ばす勢いでパワフルに生きるオカン。そこに注がれた息子の視線には、やっぱり愛がにじんでいる。