ドキッ!オカンだらけの投稿写真 ぽろりはないが「愛がある」

樺山 聡 樺山 聡

 居間で寝転び韓流ドラマざんまい。そうかと思えば、風呂上がりでタオル1枚ほっと一息。時には大ファン氷川きよしさんの公演でうっとり。そんなオカンの赤裸々な素顔を捉えた写真を、自身のフェイスブックに投稿し続けている男性がいる。ちょっとした遊び心で始めたシリーズは、ことのほか好評を博し、ついにはオカンだらけの写真展まで開いてしまった。被写体の当人はさぞ当惑されているだろうと思いきや、まんざらでもない様子らしい。

 京都市内で中古レコード・古書の店「100000tアローントコ」(中京区)を営む加地猛さん(46)=大阪府枚方市=が、近くに住む母千春さん(81)をスマホで撮影して投稿するようになったのは5年ほど前。その際、自分のアイコン写真もオカンにした。「オカンに丸ごと乗っ取られたイメージやってんけどな(笑)」

 以来、不定期で掲載。コメントもなしで写真のみを投稿することもある。

 なぜオカンなの?。

 「オカンって、ほんま謎が多いやん」。千春さんは、いわゆる「大阪のオカン」の典型。例えば、こんなことがあったという。

 親戚の葬儀。慣れない場で、どんな風に振る舞っていいか戸惑う猛さんを尻目に、オカンは隣で大号泣。悲しむ遺族。こういう時、どんな言葉を掛けたらいいのか。ありきたりの言葉ではうそっぽくなってしまうのではないか。猛さんがためらっていると、オカンはごく自然な形で声を掛ける。やはり人生経験が違う。「オカン、すげー」。と、関心しているのもつかの間。程なくして周囲の親族に「せっかく集まったんだし」とカラオケに誘う。

 「どないやねん、っていうことばかり」

 この世に生を受けて40年余り。誰よりそばで見てきたといえ、オカンはいまだ計測不能な存在なのだ。

 「もー、またそんなん撮ってー!」

 スマホのカメラを向けると毎回のようにそう言いながら、時にはピースサインも飛び出す。「いまだにフェイスブックがどういうもんか、いまいち分かってはいないみたいやけど」

 昨年7月。オカンが氷川さんの東京ドーム公演に行くというので猛さんは同行した。もちろん、撮影には絶好のチャンスである。

 新幹線の車中で弁当をほおばるオカン。東京駅のホームに立つオカン。あこがれの氷川さんに黄色い声援を送るオカン。翌日、雨の中、浅草の雷門を散策するオカン。道中、写真だけを順次アップしていった。

 東京まで1泊2日。なんて親孝行なんだろう。

 「そんなん違うって。どう言ったらいいんかなあ。例えば飼い犬の散歩でも、近所ばっかりじゃなくて、たまには広い公園に連れて行きたいやん」

 オカンの娯楽に付き添うのも、猛さんにとっては、あくまで自然な日常の延長のようだ。

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