透析の祖母のために父が開発したパンに温かい共感広がる 塩分カットでも美味しさ追求

黒川 裕生 黒川 裕生

腎臓の機能低下によって人工透析を始めた89歳の祖母のため、パン職人の父が独自に開発したという「人工透析患者でも美味しく食べられるパン」がTwitterで紹介され、透析の当事者や身近に透析患者がいる人たちから「素敵」「うちでも欲しい」と大きな反響を呼んでいる。

透析は、腎機能の低下で水分や老廃物のコントロールができなくなった人が、人工的に血液の浄化を行う治療法。定期的な通院のほか、医師の指示の下で塩分やカリウム、リンなどの管理を厳密に行う必要があり、普段の食生活で苦労する人も多い。

パン職人の父が作る「透析患者向けのパン」をTwitterに投稿した伊藤允彦(がっぱい)さん(@gatuhiko)さんによると、祖母が透析を始めたのは3年半前の2016年6月から。透析のための通院は週3回で、やはり塩分やカリウム、リン、タンパク質、水分の摂取量に制限があるという。

「祖母の場合は、塩分が多いパンを以前のように食べられなくなったことから、父が『家族と同じものを食べられるように』と塩分コントロールに特化したパンを開発しました」と伊藤さんは言う。

「パンは塩分を抑えるとどうしても味がいまいちになります。塩分をカットしながらも、なるべく『普通のパン』らしい味になるよう試行錯誤したそうです」

「具体的には、オリーブオイルを入れて味わいが出るように工夫しています。また、長時間低温熟成させることで、ソフトな口当たりを実現しました」

あくまでも塩分量のコントロールを重視したパンのため、リンやカリウムなどの調整は別の食事で行なっているが、祖母は好きなパンを食べることができて喜んでいるという。伊藤さんは「いろいろある食事の中でも、このパンは祖母のお気に入りのメニューとなっています」と話す。

伊藤さんの投稿には「ぜひ売ってほしい」というコメントも寄せられているが、残念ながら現状では量産体制がとれないため「販売の予定はない」とのこと。パンを含む透析患者用の食品や調味料は食品メーカーなどがそれぞれ製造しているほか、個人経営のパン店などが独自に開発・販売しているケースもある。

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