妊婦さんが安心できる社会に マタニティマークの"逆"バージョンを作った男性の思い

黒川 裕生 黒川 裕生

マタニティマークといえば、女性が妊娠中であることを周囲に伝えるツールとして定着していますが、このマークを逆に「妊婦さんの力になりますよ」というメッセージを発信するために使う試みが注目を集めています。奥さまが妊娠中に経験したある出来事をきっかけにアイデアが浮かんだという、制作者の椎野祐輔さんに話を聞きました。

昨年12月に長男が生まれたばかりの椎野さん。11月、妊娠中の奥さまと乗っていた電車で、優先席にいた高齢の女性が気づいて席を譲ってくれたのだそうです。椎野さんは「自分も優先席を必要としている」ような人から席を譲ってもらったことに申し訳なさを感じると同時に、初めて「譲られる側」に身を置いたことで世界の見え方が変わったといいます。

「譲られる側の立場から『譲ってください』と声をかけるのは、とてつもない勇気が必要。一方で、座っている側の人も決して『譲りたくない』と思っているわけではなく、実は譲るのにも勇気が必要です」と椎野さん。「この経験をきっかけに、妊婦さんが席に座りやすくなる、そして座っている人も席を譲りやすくなるにはどうすればいいかを考え、『妊婦に席を譲りますマーク』を思いつきました」

マタニティマークに「席ゆずります」「声かけてください」と言葉を添えたタグ型のアイテムをデザインし、すぐに発注。12月初旬に40個が完成しました。当初は身近な人に配るだけのつもりでしたが、手に入れた人が「知り合いが作った逆バージョン!!ステキ!」と写真をTwitterに投稿したことで、一気に注目が集まります。問い合わせが相次いだため、急いで追加の発注をかけましたが、今は入荷待ちの状態になっているそうです。

Twitterなどでは「めっちゃ良いの見つけた!」「これホントもっと広まってほしい」「衝動買いしました!」といったコメントや、「こういう事しないと譲ってもらえないのも悲しいけど、それをただ嘆いても何も解決しないからね!」という声も投稿されるなど、大きな反響を呼んでいます。

椎野さんは「多くの人がこの問題をあらためて意識することにつながり、良かったと感じています。もちろんこんなマークがなくても席を譲り合えるのがベストだとは思いますが、現実は普通のマタニティマークをつけていても席を譲ってもらえず、大変な思いをしている妊婦さんも少なくありません。この『譲りますマーク』の考え方が広まることで、少しでも妊婦さんたちの安心につながればと願っています」と話していました。

最終的には、妊婦だけではなく、お年寄りや乳幼児連れ、障害のある人など、座席や手助けを必要としている人たちが救われるマークに発展していくことを期待しているそうです。値段は実費相当分の1個380円と送料120円。

■妊婦に席を譲りますマーク http://sekiwoyuzuru.starfree.jp/

■Twitterアカウント @sekiwoyuzuru

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