こんがり生地にとろ〜りとろけるチーズ。大人も子どもも大好きピザ。パーティーの必需品にもなり、今や市場規模は 2676 億円(2018 年度)にも上るといわれます。が、今から50年ほど前、ピザの黎明期ともいえる時代に、すい星のように姫路に現れて消えた「幻」の巨大ピザ屋があった―と聞き、取材してみました。
その店は 1972(昭和 47)年に JR 姫路駅の駅ビル内のフードコートにあった「ジャンボピザ ウィング」。回転焼き「御座候」で有名な「御座候」(本社:姫路市、社名も同じです) の創業者、故・山田昭二前会長の発案で作られたそうです。
同社に残る写真では、イタリアンというより全面アメリカンな店構えは、かなり凝ったつくり。店員さんが手に持つピザは、ぱっと見で直径 50 センチはありそうな大きさで、御座候が1個 25 円だった時代(現在は 95 円)に、1ピ ース 100 円。お出かけのとき限定のちょっと贅沢な軽食、というイメージでしょうか。ちなみに、巨大さで知られるコストコのピザは直径約40センチだそうです。
ピザ協議会(東京都)によると、日本のピザの始まりは諸説あり、1944(昭和 19)年に 神戸のイタリアンレストランが最初というのが有力ですが、戦後まもなく宝塚市にオープンした 「アベーラ」という説もあるそうです。
東京オリンピックのあった 1964 年には日本のピザ 製品のパイオニアである「ジェー・アンド・シー・カンパニー(現ジェーシー・コムサ)」 が冷凍ピザの家庭向け商品を発売したものの「チーズの食習慣もない時代にはなかなか普及せず、都心のバー、喫茶店などへの販売で少しずつ販路を広げていた」と同協議会。転機になったのが 1971(昭和 46)年。同社のピザがファミリーレストランのメニュー に採用され、前後して当時の明治乳業や雪印乳業も家庭用冷凍ピザの市場開拓に着手した―といいます。
一方、「ピザ専門店」としては 1956(昭和 31)年に東京・六本木に「ニコラス」が誕生したほか、 1969(昭和 44)年には日比谷の「ピザハウス ジロー」のピザ&オレンジソーダに行列ができ話題に。1973(昭和48)年にはアメリカのチェーン店「シェーキーズ」が日本に上陸しました。