「特定抗争団体」指定で暴力団は身動き取れず 5人以上集まれば直ちに逮捕…打ち合わせさえも難しく

小川 泰平 小川 泰平

 指定暴力団の山口組と神戸山口組の対立抗争とみられる事件が相次いでいることを受け、兵庫、愛知など6府県の公安委員会が暴力団対策法に基づく「特定抗争指定暴力団」に両組織を指定することになり、7日にも官報で公示されて効力が発生する。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は6日、当サイトの取材に対し、この指定によって暴力団の活動がどのように制限されるのかを解説した。

 特定抗争指定暴力団は、福岡県に本部を置く道仁会と九州誠道会(現浪川会)が2012年に全国で初めて指定され(14年6月に解除)、今回が2例目となる。6府県の公安委は「警戒区域」を設定し、組員らはおおむね5人以上で集まることを禁じられる。事務所使用や対立組員への付きまといなども禁止され、違反すれば警察が直ちに逮捕。指定は3カ月ごとに更新されるが、抗争終結までは解除されない。

 小川氏は「大幹部クラスになると、普段でも10人以上のボディーガードが付いている。ところが、5人以上が集まれないということになると、運転手を入れて、本人以外で3人までしか付けられない。『5人以上はアウト』とされると、身動きが取れない状態になる」と指摘。さらに「幹部同士が集まって、面と向かって話をすることも不可能になる。4人まではOKだが、ボディーガードはゼロになるわけで、実質的に無理である」と付け加えた。

 同氏は具体的な例を挙げて説明した。「喫茶店で同じテーブルに暴力団の幹部が座っていても4人までならセーフだが、違うテーブルであっても、同じ店内にボディーガードが1人でも座っていたら計5人になるのでアウト。そのボディーガードが店外にいたとしても、そこが駐車場であればアウト。同じ敷地内とみなされるからです」。面と向かって話し合いもできないことから、連絡業務は電話や手紙、ファックス、メール等でのやり取りに限られてくる。

 さらに、小川氏は「事務所等に部屋住みの組員は使用が禁じられ、住むことが許されない。所有している住宅であっても、4人以上住むことはできないので、それ以上になると出て行かざるを得なくなる。外に部屋を借りるしかなくなるが、それも難しい。6府県以外の県や東京都などの組関係者に世話になることができても、今後6府県以外の地域まで取り締まりの対象が広がる可能性もある」と解説した。

 小川氏は「現在は、六代目山口組、神戸山口組両団体の幹部が、個人的に交流のある、過去に指定を受けた九州の組織の幹部から、当時の警察の取締り方法やその対応策に関して情報を仕入れている聞いている」とも明かした。

 今後について、小川氏は「指定は3カ月ごとに更新されるが、六代目山口組か神戸山口組のどちらかが解散しない限り、解除されること難しい。両方解散か、片方の解散かになるかだが、形だけの『解散』では認められない。一度指定したら簡単には解除されないということは相当なダメージになる。警察としては、身動きを封じて、暴力団の弱体化を達成することにつながる」と評した。

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