完成した作品は18年9月に東海地方で放送された。視聴率は2.8%。週末の夕方としてはかなり低く、「地元でのリアクションはほとんどなかった」(圡方)という。ところがその挑発的なテーマや演出がネットなどでは大反響を巻き起こし、番組を録画したDVDが密造酒のように各地のテレビ、映像関係者の間で密かに出回ったという。
その注目作が、劇場用に再編集されてついに全国公開となる。テレビを“マスゴミ”と揶揄する人たち、メディアに不信感を持つ人たちの目に、この作品はどう映るのだろうか。
「最初は僕も“マスゴミ”的な部分を撮ろうと思っていました。だって、テレビがテーマのドキュメンタリーだったら、絶対に期待されるところじゃないですか。ところが、いざ始めてみると、意外と撮れないんですよ。みんな真面目にやっているから。仕方がないので、“マスゴミ”的なところは取材する自分たちの姿を通して表現しました」
「テレビって実際以上に『悪』と思われている気がします。世論を誘導し、大衆を洗脳しようとしている…という陰謀論のような見方もされがちです。が、本当はそんな大きなことを考える余裕はありません。残念ながらもっと小さいです。むしろ、常に皆さんの顔色を窺い、嫌われないように、『喜ぶものは何ですか、好きなものは何ですか』と、ひたすらそんなことばかりをやっている。僕はむしろ、そっちの方が問題じゃないかと思います」
それでも視聴率からは離れられない
「最終的に手の内も全て明かす」というテレビ的な仕掛けが炸裂するラストまで、自身の身を切るように描き切ったテレビの自画像。テレビマンとして、ある種の禁じ手を放った圡方だが、今後は報道部の一記者として、また「視聴率を取るために」やわらかい街ネタを探す日々に戻っていくのだという。
「テレビマンの宿命ですね。映画でこれだけ偉そうに現場のあり方に疑問を呈してみても、やっぱり視聴率から離れて『本当に自分たちが伝えなきゃいけないものは何だろう』ということに専念するのは難しい。それはメーカーが売り上げを無視して商品を作るようなものですから」
そう自虐的に語る圡方はしかし、映画用にこんなコメントも残している。
「一度自画像を描いて皆で眺めてみることで、何がマズいのか現状を共有する。そこから始めるしかないんじゃないでしょうか」
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