前置きが長くなったが、そんな一連の流れを受けての「全仕事」である。フルカラーで全175ページ。特に、日野の生まれた1946年4月19日から2019年の絵本出版、映画「電車を止めるな！」出演のことまでを微に入り細を穿って回顧した「年譜」、そしてこれまで発表した作品の全タイトルと掲載誌を記載した「作品目録」は圧倒的な情報量だ。気が遠くなるほど大変な作業のように思えるが、寺井さんは「楽しくてしょうがなかった」と笑う。「歴史上の偉人のように思っていた日野先生と一緒に仕事ができるなんて夢のようでした。小学生の自分に自慢したいくらいです」
このように、編集作業には「一切ストレスがなかった」という寺井さんだが、気がかりなことがふたつほどあるという。
「ひとつは、謎のベールに包まれているのが日野先生の魅力でもあると思うので、この『全仕事』でどこまで素の部分を見せていいのかということ。見せたい！でも見せたくない！と葛藤しました」
「もうひとつは、私より上の世代のコアな日野日出志ファンに喜んでもらえるかどうか。筋金入りのファンに『こいつわかってないな』と思われるのは悔しいですし、とはいえ、これから日野先生を知る人にとっての入門書にもしたいので、バランスはかなり考慮したつもりです」
幸い、発売後のファンの反応は上々。巻末の寺井さんとの対談で、日野は「絵本のアイデアはまだまだいっぱいある」「皆さんの期待に応えられるよう頑張ろうと思います」と前向きに語っている。日野日出志の熱いブームはまだまだ続きそうだ。
「日野日出志全仕事」は税別3400円。全国の書店などで発売中。
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