30年来の熱烈ファンが伝説的怪奇漫画家・日野日出志の全仕事を本にするまで

黒川 裕生 黒川 裕生

唯一無二の画風で多くのちびっこ読者を恐怖のどん底に突き落とし、癒えないトラウマを植えつけてきた怪奇・ホラー漫画界の伝説的巨匠、日野日出志。その50年以上に及ぶ漫画家活動を網羅した本「日野日出志全仕事」が玄光社から発売された。「あしたの地獄」など単行本未収録の作品4本や、ちばてつや、古谷三敏、里中満智子らが日野を語るインタビュー、カラー原画コレクションなどを収録。日野の知られざるギャグ漫画家としての一面や、叙情的な作風の魅力も掘り下げるなど、あらゆる角度から日野ワールドの深みに迫る、ファンならずとも必携の書となっている。

日野は1946年、旧満州出身。67年のデビュー以来、雑誌「ガロ」や「少年画報」「少年サンデー」などを中心に、「蔵六の奇病」「地獄変」などこれまで450本以上の作品を世に放ってきた。2000年代初頭から長い「冬眠」期間に入っていたが、2018年、銚子電鉄の正気を疑うスナック商品「まずい棒」のキャラクター「まずえもん」のデザインで15年ぶりに画業を再開。19年は初の絵本「ようかいでるでるばあ!!」を手掛けたほか、コンビニで代表作の単行本が発売されて話題になるなど、ちょっとした“日野日出志ブーム”が続いている。

そんな中、満を持して刊行された「全仕事」。企画・執筆したのは神戸出身の文筆家、寺井広樹さんで、小学校2年生の頃から30年来の日野日出志ファンだという。

「友人の父が日野先生の大ファンで。その友人宅には『絶対に入ってはいけない』と言われていた開かずの間がありまして、そこにこっそり忍び込んで初めて目にしたのが日野先生の作品でした。ショッキングな絵柄や物語は幼い私には衝撃的で、貪るように読みましたが、そのうち日野先生の漫画本に触れるのすら恐怖するほどのトラウマを植えつけられたのです」

大人になると寺井さんの日野日出志愛はいよいよ止まらなくなり、2年前、ついに本人と接触。寺井さんが文筆業と並行して手掛ける地域活性化プロジェクトのひとつ「まずい棒」のキャラクターデザインを依頼し、十数年ぶりにイラストを描き下ろしてもらったのを機に、日野と寺井さんとの熱いタッグが始まった。

まずい棒で創作のスイッチが入った日野はTwitterアカウントを開設し、ファンとの交流を楽しむようになった。さらに「絵本を作りたい」と意欲を示しため、寺井さんが文章を担当して「ようかいでるでるばあ!!」を制作。そんな2人の勢いはいや増すばかりで、寺井さんが18年の大晦日から日野に密着したドキュメンタリー映画「伝説の怪奇漫画家・日野日出志」を完成させ、さらには共同で「日野プロダクション」まで設立してしまった。

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