今年の漢字「令」はどう書くのが正解? 書き方いろいろ、あの色紙にも疑問

樺山 聡 樺山 聡

 一年の世相を表す「今年の漢字」が京都の清水寺(京都市東山区)で12日発表され、新年号「令和」にちなんだ「令」が選ばれた。ところで、菅義偉官房長官が新元号公表時に掲げた墨書を見て、「あれ? 何か違う」と思った方もいたかもしれない。「令」の字の最後の1画がはねている。上の部首「ひとやね」の下の部分も横線ではなく点のようになっている。「もしかしたら間違いじゃないの」。発表直後、「漢字ミュージアム」(京都市東山区)には、そんな疑問も寄せられたそうだ。

 「教科書に載っている『令』の下の部分は『マ』のようになっていて、その印象が強いせいか、テレビの会見を見て疑問に思った方が多かったようです」。漢字ミュージアムを運営する「日本漢字能力検定協会」の中村真樹・執行役員は語る。また、「マ」のように最後の一角が斜めではなく、縦の直線という印象がある方も多いだろう。

 菅官房長官が掲げた墨書は政府職員が書いたとされている。達筆で美しい字形も話題になったが、歴史的な文字を書く際、つい力んで、はねてしまったのか。

 「いや、間違いではないんです。『マ』のような令も、直線の令も、どれも正解」。中村さんは言う。「字形の微妙な違いは書体の違いで、漢字としてはどれも正解なんです」

 学校の教科書で使われる教科書体の「令」は下の部分が「マ」のような形で、ゴチック体や明朝体ならば最後の一角は基本的に縦線となっている。手書きの場合はさらに多様で、今回のように少々はねたり、部首「ひとやね」の下の部分が点のようになったりしても、国が2016年にまとめた指針で「問題にする必要はない」とされているという。だから、仮に学校のテストで令の最後の一角をはねて書いて×を付けられたら、先生にそう言おう。

 ゴチック体や明朝体といった書体は「フォント」と呼ばれる。このフォントの世界を紹介する企画展「フォントのホント展」が折しも、漢字ミュージアムで開かれている。

 「現代はフォント時代と言ってもいいかもしれません」と中村さん。フォントの歴史は古く、印刷技術の歴史と重なるが、コンピューターの発展とともに進化し、今はさまざまな書体がデザイナーによって開発されている。「その種類は数千種とも言われています」。企画展では、フォントデザイナーの仕事内容が、実際に使う道具などともに紹介されている。

 絵文字ならぬ「フォント文字」も会場にはある。

 メールのやりとり画面が表示された端末に文字を打ち込むと、その文字の内容に合った書体で自動的に表示される。例えば「寿司たべたい」と文字を打ち込むと、筆で書いたような古風な文字で映し出された。このソフト、まだ実用化はされていないようだが、近い将来、書き込む気分に合ったフォントで豊かなコミュニケーションが交わされる時代が来るかもしれない。

 フォントを通して日本語の豊かさを体感できる「フォントのホント展」は来年1月5日まで。月曜休館。入館料大人800円、大学生・高校生500円、小中学生300円、未就学児・障害者は無料。

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