あれから15年近く。福井さんはレストランやホテルでパティシエとしての腕を磨きながら独立の準備をし、兵庫・西宮市の阪急甲東園駅近くにカフェ『Ondes (オンド)』をオープン。一人で切り盛りしているため忙しい毎日ですが、家に帰って美空ちゃんの顔を見ると、疲れも吹っ飛ぶと言います。
「仕事が変わるたび、4年に1回くらいのペースで引っ越したんですけど、みぃちゃんは耐えてくれました。病院へは健康診断と爪切りと肛門腺絞りのために3か月に1度ずつ。今のところエイズも発症していないし、元気な15歳ですよ。こんなに長生きしてくれるとは思いませんでした」
そう言いながら、膝の上の美空ちゃんをやさしくなでた福井さん。そして、こんな話を聞かせてくれました。
「そういえば、11歳のときレントゲンを撮ったら、背骨が1本少ないと分かったんです。道理で、段差の上り下りが下手だと思ってたんですよね。少しの段差でもバランスを崩してコケてたし、猫にもこんなどんくさい子がいるんやって思ってたら、背骨が1本少ないって。そりゃあ、歩きにくいですよね。ハハハ」
最初に病院へ行ったとき、妊娠中にもかかわらず2.5キロしかなかった体重も、今では3.5キロに。猫エイズを発症させないためにはストレスフリーな生活が大切だと言われていますが、背骨が1本少ないことを深刻に受け止めるのではなく、こんな風に笑い飛ばせる明るい福井さんと一緒だから、美空ちゃんは15歳になった今も、元気でいられるのでしょう。
もともと“犬派”だった福井さんが、ひと目見たときから「気になってしょうがなかった」という美空ちゃん。福井さんと一緒にいたくて、何か特別なオーラを出していたのかもしれません。