真夏の炎天下ふらふらしていたガリガリの猫、息絶えるかと思われたが、保護されて元気を取り戻した。マイペースな先住猫と違い、犬のように人懐っこい猫。エイズキャリアだが、家族に温かく見守られて暮らしている。
ガリガリにやせた猫
2017年8月、長野県に住む清水さんは、ガリガリにやせた野良猫を見た。いつ死んでしまってもおかしくないくらやせ細っていて、衝撃的だったという。その後、清水さんは、勝手口のプラごみを置いてあるところの近くに、飼い猫のゆめちゃんのごはんを置いてみた。プラごみを漁った跡があり、しかし、2、3日猫の姿を見かけなくなった。それから数日後、早朝からギラギラ太陽が照り付ける日曜日、勝手口の扉を開けるとゴミネットが畳んである上に猫が横たわっていた。
「ゴミネットがベッドのようになっていて、猫は寝ているというより、動けないようでした。ここで死ぬつもりだったのかなと思いました」
「お名前は?」と聞かれて
清水さんは、抱っこして猫を家に入れ、家族で病院に連れて行った。目ヤニで目はがちがちに閉じていて、身体はところどころはげて耳の後ろの毛がなかった。推定5カ月くらい。
動物病院の受付の人に「お名前は?」と聞かれて、まだ保護したばかりで名前がなかったが、とっさに「はなです」と言った。先住猫のゆめちゃんと同じように女の子らしい名前がいいと思ったそうだ。ぐったりしていたが入院する必要はなく、数カ月間通院して治療した。「子猫らしい感じはしなくて、寝たきりでつらそうでした」
ストレスの少ない生活を
先住猫のゆめちゃんも保護猫だが、はなちゃんが来た時すごく警戒して、自分の猫部屋から出てこなくなった。いまでも、はなちゃんは一緒に遊びたいようだが、ゆめちゃんははなちゃんを避けている。
先住犬のミニチュアダックスフンドのそらくんは、はなちゃんを見ると吠えた。ワンワン吠え続けるので、そらくんのケージからはなちゃんが見えないようにした。はなちゃんは、「何も聞こえません」とでもいうかのようにじっとしていた。ある日、そらくんをケージから出すと吠えなくなった。
はなちゃんが元気になってからは立場が逆転。そらくんの尻尾を追いかけて遊ぶようになったという。はなちゃんは、ゆめちゃんとは正反対の性格で、犬みたいに甘えん坊になった。
「意外でした。猫って、あまり人に甘えたり、べったりくっついたりしないと思っていたのですが、ずっと後をついてくるし、私のお腹の上で寝るんです」
じつは、はなちゃんはエイズキャリアだ。
「発症しないように、ストレスの少ない生活を送ってほしい。家族みんなで可愛がっているんです」
はなちゃんのことを楽し気に語る清水さんだったが、思いを込めるように最後にそう語った。