屋久島のサルに「餌付け」か?森にばら撒かれた菓子、人的被害も…「20年の取り組み無に」地元に嘆きと怒り

広畑 千春 広畑 千春

 実は、屋久島では1970~80年代に、野生のサルを餌付けして観光に役立てようという試みがあったという。だが、人間の食べ物の味を覚えてしまったサルが群れを渡り歩くことで、餌付けをしていなかった地域のサルにも習性が広がり、農作物を荒らしたり、女性や子ども、お年寄りらを襲う―といった被害が続出。1990年代初めからはボランティアがステッカーを作るなどして、サルやシカなどに餌をやらないよう訴え続けてきたほか、2011年には町も餌付けを禁止する条例を制定。違反者には罰則も設けた。

 「それでも、サルは一度覚えた味を忘れない。10年、20年地道に訴え続けて、そういうサルが死に、世代が変わってようやく最近、落ち着いてきたところなんです」と屋久島観光協会。「人の食べ物は野生動物にとっては有害なこともある。自然界は私たちが計り知れない複雑な関係性の中で成り立っている。餌付けによって動物の食生活や行動を変えることは、そのバランスを壊してしまうことにつながるんです」と訴える。

 町の統計によれば、屋久島を訪れる観光客は2017年度29万人を超え、海外からの観光客も増えているという。屋久島観光協会の投稿のシェアは続き、支援するコメントも多く寄せられている。担当者は言う。「屋久島の魅力は、『自然vs人間』ではなくて『自然とともに人が生きてきた』という歴史にあると思うんです。そう考えると、今屋久島に住む人としての役割は、自然に対するマナーの意識啓発を、これまでよりもっと積極的に行っていくこと。少数の、自然への知識が乏しい人たちにどのように理解してもらうか、その方策を考え、発信していきたい」

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