取材した日もアメリカ人のカップルが訪問。「ユーはなぜ、ここへ?」と尋ねると「サイトで見つけてやって来ました。浮世絵は日本独自の文化を感じられ、ヒューマニティーにあふれている」と興味深そうに魅入っていた。
建物の1階は受付があり、浮世絵グッズと和風小物を販売。2、3階が展示室(五輝亭貞広の「ひらかな盛衰記」、春好斎北洲の「けいせい花大樹」など30点)になっており、3カ月に1回入れ替え。4階は和室になっており、浮世絵摺(す)り体験ができると好評だ。
またテーマごとに年4回の企画展を実施しており、現在は「浮世絵のいろいろ~きいろ編」(12月1日まで)を開催。「木版によって制作される浮世絵は色ごとに版がつくられます。今回は絵に使われる黄色の効果や役割を探ろうと、それに合わせた絵を展示しています」と言う。
淡路島出身の高野館長は幼いころから芝居好き。「祖母と一緒に文楽や浄瑠璃を観に行って、義太夫が語る喜怒哀楽が印象に残っていた。五右衛門風呂を聞いて育ったようなもの。それと小6のとき、モミジの絵を描き、それを校長室に飾ってもらい、絵が好きになったんですよ」
いまも賑やかな道頓堀は昭和初期まで「道頓堀五座」(浪花座、中座、角座、朝日座、弁天座)が並ぶ娯楽の街だった。「言わばブロードウェイのようなところ。スターの役者がこの界隈をそぞろ歩きしたり、船乗り込みをしたり。上方浮世絵に描かれた役者が生き生きとしていたこの場所で、これからも日本独自の美を伝えていきたい」
来館者の8割は訪日外国人。関西人が思っている以上の人気スポットのようだ。独占させるのはもったいない。
▼上方浮世絵館 大阪市中央区難波1―6―4 電話06(6211)0303
月曜・祝日休館。入館料は大人500円、小中学生300円。