ラグビーW杯特需がマーケティングの新潮流に 盛り上がる現場で体感

渡辺 広明 渡辺 広明
ラグビーW杯でサポーターが詰めかけた英国風パブ=横浜市内
ラグビーW杯でサポーターが詰めかけた英国風パブ=横浜市内

 流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」。今回のテーマは大盛況のうちに閉幕した「ラグビーW杯」。このビッグイベントによって生まれた新しいマーケティングの潮流や可能性について、実際に試合会場や近くの街で現場の盛り上がりを体感した筆者が分析した。

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 ラグビーワールドカップが大盛況のうちに幕を閉じました。

 日本代表の前回大会の南アフリカ戦の奇跡と今回のベスト8で得た「確信」によって、ラグビー文化が日本に定着したのではないでしょうか?

 知り合いの関係者から大会3か月前に盛り上げのため襟章を付けてくれと頼まれていましたが、失念していて、盛り上がりが一挙に加速したサモア戦の後に慌てて襟章をしてみたら、日を増すごとに商談相手の反響が高まっていくのが目に見えて分かるほどでした。

 少年向けラグビースクールは、全国に約420校ありますが、関係者に聞くと都内のあるスクールでは練習見学者が数人ぐらいしかいなかったのが、大会後の練習には100人以上が訪れる日があったようです。親心を動かすのはマーケティングの押さえとして完璧です。

 「HUB」は英国風のパブがあまりない事もあり、ラグビーファンはサッカーファンの6倍ビールを飲むという定説通り、ニュージーランドvs南アフリカのあった9月21日の横浜国際競技場近くの店では15リットル樽が83個売れる新記録となり、なんと1分間に1.8リットル、 通常の約10倍の消費量だったようです。

 日本代表スポンサーの大正製薬リポビタンDも、医薬品のため10%の消費増税で本来は苦戦が予想されましが、あるコンビニの売上は前年130%を超えて大健闘しています。

 日本代表の桜ジャージは20万枚以上売れ、オフィシャルユニフォームも在庫切れ。ワールドカップ特需は全国を席巻しました。

 フッカーの北出選手が考案した、ごはんに高菜、めんたいこ、しらす、ネギをかけ、最後に卵とごま油を添えて食べる〝北出丼〟は、中小の食堂でメニューとして追加され、外食が消費税10%となって苦戦中に一筋の光明となっています。権利ビジネスとは一線を画す新しいマーケティングの潮流ともなりそうです。

 大会チケットは180万枚以上が販売された外国からの購入が約3割となっています。従来のインバウンド消費の中心はアジアの訪日外国人でしたが、今回は欧米人が中心で、この44日間は東京オリンピックに向けての流通のあり方の試金石になったのではないでしょうか?2025年の大阪万博までに、観光立国日本が形作られていくのは間違いないでしょう。

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