東京タワーの絶妙なアングルを狙える撮影スポットがアジア系外国人観光客の間で話題になっている。同時に、撮影の順番待ちをするために行列している人たちの姿がSNSでも話題になっている。その実態とは?現場からレポートする。
「東京タワー下」の交差点を右折してタワーへと至る坂を登りかけた左手に、その撮影スポットはある。夕方5時前、まだライトアップされていないにも関わらず、既に約20人が並んでいた。どこで撮影するのか。様子をうかがうと、地下駐車場から東京タワー方面に出る階段だった。狭い階段の両脇には壁があり、その隙間から仰ぎ見たアングルの東京タワーが琴線(きんせん)に触れるようだ。
階段内では中国語を話す男女のカップルが撮影中だった。彼がカメラマン、彼女はモデルとなり、さまざまなポーズや表情を変えてスマホで〝激写〟している。さらに側壁の上部に彼女が腰かけ、タワーを背後に顔の角度を微妙に変えながら延々と撮影が続く。その後で撮影者が彼女にチェンジ。もう10分は経過しているが、クレームを付ける人は皆無。並ぶ人は男女のカップルか女性のグループが多かったが、不平を言うこともなく、静かに待っている。
カップルが階段内で撮影中、列の先頭にいたタイ人の女性4人組に話を聞いた。この場所の魅力を尋ねると、英語で「ナロー(狭い)スペースから見上げる東京タワーがクール。ぜひここで撮りたかった。あなたも撮るのなら、ちゃんと後ろに並んでね」ということで最後列に並んだ。もちろん、そのつもりでいたが、〝取材特権〟などはありえない雰囲気だ。
ようやくタイの女性グループが階段に入り、4人が交互に撮り合って約15分を要した。その後の人たちも互いが納得するまで撮り合っている。ツイッターには日本人とみられる投稿者が「いつまでもいつまでも撮り続けるせいで、ぜんぜん進まんから諦めて帰ってきた」と嘆いていたが、実際、途中で離脱するカップルも見かけた。並んでから55分後、目の前にいた上海のカップルに続いて、記者に順番が回って来た。
階段を下り切ると地下駐車場の出入口がある。23段ある階段の横幅をメジャーで計測すると約1・5㍍。深さ4・5メートルくらいの最深部が地下駐車場への出入口で、そこから東京タワーを見上げると、どこか「防空壕」を連想した。そして、その狭い壁の隙間から浮き上がるタワーには確かに不思議な切り口があった。記者は1分ほどで撮影を終え、階段を出ると、行列は30人を超えていた。