行列ができる大阪・スパイスカレー事情…インスタ映えとリーマンショックが追い風に

大西 昭彦 大西 昭彦

大阪のスパイスカレーが話題になっている。“粉もん”で知られる大阪だが、近ごろはカレー人気に火がつき、客層も広がりをみせているという。梅田周辺やミナミはもちろん、堺筋本町、谷町四丁目、靭公園あたりでは人気店がせめぎあい、食事時には行列ができるほどだ。

ひとくちにスパイスカレーといってもさまざまなタイプがある。日本で発達した欧風カレー、現地人シェフによるインドやネパールのカレー、タイ風などのエスニック系、さらに老舗のカレーまで多種多様。こうした大阪独自のスパイス文化のなかで、新たに注目されているのは各店が研究を重ねた完全オリジナル版のスパイスカレーだ。

ルーをつかわずスパイスからつくるという点は、たしかにインド系のカレーと似ている。しかし、ナンやチャパティなどをそえるインド系に対し、大阪スパイスカレーはご飯のうえにかけるのを基本としている。

大阪のスパイス文化が独自に進化

歴史をたどってみると、カレーが日本に上陸したのは明治時代。当時は白飯にドロリとした黄色(茶色)い液体がかかった奇妙な料理を見て、多くの人は敬遠したらしい。そりゃそうだろう。ところが、大阪人は独自のアレンジを加えながらこれをとりこんでいった。生卵をかけ、白飯とカレーをスプーンでかき混ぜながら食べるカレーだ。こうした大阪のカレー文化のうえに、新しいスパイスカレーが誕生してきた。

エスニック系食料品店(神戸市中央区)で話を聞くと、「スパイスは、まずフレッシュ(生)とドライ(乾燥)にわかれる。そのまま乾燥させたものをホールスパイスといい、これを粉状にしたものがパウダースパイス」という。近年はスーパーでもフレッシュハーブから、ホールのクミンやカルダモン、パウダー状のターメリックやナツメグまでさまざまなスパイス類が手にはいる。「これらの組みあわせ方、あるいは鍋にいれる順番を変えるなどして、味に変化が生まれる」そうだ。

スパイスカレー店では、独自にアレンジしたカレーに特徴ある具材が混ぜこまれる。味はそれぞれだが、強烈なスパイスが味覚と嗅覚を襲うのは共通している。

京都や神戸、東京にも人気が飛び火

人気の背景には、味のほかにも要因がある。ひとつは、インスタグラムなどSNSの普及だ。“映え”を意識して、カレーの色にこだわり野菜などを鮮やかにトッピングする店も多い。それらが来店客によって拡散され、さらに新しい客を呼びこむことにつながっている。

いっぽうで、店の側にも事情があるようだ。リーマンショックなど不況のあおりをうけて、廃業した空き店舗が都市部にふえた。貸し手としては、賃貸料をさげても借り手がいれば空き店舗にするよりはましだ。さらに夜間営業のバーやスナックなどが、昼間の空き時間に店を貸しだしているケースもある。カレー店を開きたいという人たちにとって、開店のための敷居が低くなったわけだ。

このところ京都や神戸など周辺都市のほか、東京にもスパイスカレー人気が飛び火している。大手資本もこれに目をつけ、参入しているところもあるようだ。

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