赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる頃は、赤ちゃんは空気を吸えないので肺は機能していません。ですから肺をショートカットして血液が流れるように、大動脈(全身に血液を送る血管)と肺動脈(肺に血液を送る血管)の間にバイパスを作って、肺には血液が流れないようになっています。一方で、お母さんのお腹から出てしまえば、今度は自分で空気を吸って酸素を身体に取り込まなければなりませんので、そのバイパスは必要なくなり消えてなくなります。しかしそのバイパスが消えずに残ってしまうのが動脈管開存症です。
バイパスが残ってしまうと、必要以上に肺に負担がかかってしまい、短命になる可能性が高いのです。しかし、早期にこの病気を発見してバイパスを塞ぐ手術を行えば、その後はこの疾患の無い犬猫と同様に、寿命をまっとうする事が出来るようになります。
私が大変お世話になっております某先輩獣医師は、この動脈管開存症で販売できない子犬・子猫を引き取り、自分の動物病院に勤務する若手獣医師にこの動脈管開存症の手術をさせ、誰かに飼ってもらうという試みをされていらっしゃいます。
生き物を売買することに対しては、いろいろな考え方があると思います。購入されたにしても譲渡されたにしても、あるいは拾ったにしても、ご縁があってお家にやってきた犬や猫たちです。お家にやってくるまでの辛かったことや痛かったこと、怖かったことやしんどかったことなどは、彼らは語ってくれません。ただただ、私たち人間を全面的に信用してくれて、過去の辛かったことは思い返したりせず前を向いて生きていく彼らを、私はとても尊敬しています。飼われた犬や猫たちはみんな、幸せになって欲しいなと思うばかりです。