野良犬だったイングリッシュセッターが、子犬を出産した。お母さん犬のことを気にかけていた人や獣医さんの指導のもと、子犬たちは離乳後、無事に保護された。先代犬を亡くして、何年も喪に服していた中華料理店の店主は、そのなかの一匹に出会って再び犬を飼う決心をした。
野良犬のイングリッシュセッターが妊娠、9匹の子犬が誕生
千葉県のあるところに、イングリッシュセッターの野良犬がいた。イングリッシュセッターといえば、大型の猟犬。もとから野良犬であるはずはなく、誰かが猟犬として飼っていた犬を山中に捨てたか、ペットとして飼われていたが遺棄されたと考えられている。体は大きいが、人に危害を加えるわけでもなく、可愛がってごはんを与える人もいたという。
ところが、ある日、その犬が妊娠してしまった。普段から気にかけていた人たちがそっと見守っていると、やがて9匹の子犬が産まれたという。残念ながら1匹はカラスに持っていかれてしまった。動物病院の獣医師に相談すると、なんとかして母子ともに保護できないかと言われたが、母犬が強く警戒していたため近づくことさえ困難だったという。
獣医師によると、子犬を保護して人工保育するのは、非常に難しく死亡してしまう可能性も否定できなかったという。そこで、有志の人たちが屋根付きの囲いを作り、その中で母犬は離乳するまで子犬を育てたそうだ。
個人で犬の保護ボランティアをしているファーブル家は、獣医師から連絡を受け、3匹の子犬を引き取った。母犬は、地域のお寺のペットになったという。
もう犬を飼うことはないと思っていた
東京・浅草で中華料理店を営む栖原(すはら)さんは、大の犬好きだった。2006年にミニチュアダックスフントのきんたくんを8歳で亡くして以来、ずっと新しい犬を飼う気になれずにいたそうだ。
「もう犬を飼うことはないと思っていて、家族も口にしなかったのですが、昨年(2018年)の大晦日、毎年手伝いに行く両国のそば屋さんの自宅に行くと、その人が飼っている大型犬の老犬が近づいてきてくれたんです。尻尾を振って喜んでくれて、それは、それは嬉しくて。子犬ではなく、大きなシニア犬に心を奪われた。やっぱり私は根っから犬が好きなんだなあと思いました」
年が明けて元旦。栖原さんは、店に来てくれたねこのボランティア活動をしている人に、久しぶりに犬と触れ合った時の気持を話したという。その後、そのボランティアさんが子犬を保護していたファーブルさんに栖原さんを引き合わせてくれて、栖原さんはセッターが産んだ子犬に会うことになった。
幸せのシャワー、ぷーすけくん
栖原さん一家は、3匹のコロコロした子犬を前にして、1匹だけ選ぶことができずにいた。
「どの子も可愛くて、みんな一緒に遊んでくれるし、選ぶなんてできませんでした。ところが、薄茶色の耳のコロコロした子犬が尻尾をフリフリしてじゃれついてきて、おまけに私の顔にチューまでしてくれたんです。彼が私たち家族を選んでくれたと思っています」
子犬は、ぷーすけくんと名付けられていたが、可愛い名前だったので、そのまま名前を変えずに飼うことにしたという。ぷーすけくんが家に来てから、一家で毎日「幸せのシャワー」を浴びるような毎日。ぷーすけくんは、お母さんが大型犬なので、毎日ぐんぐん大きくなっている。あっという間に過ぎてしまう子犬時代を栖原さんは楽しんでいる。
取材中にもぐんぐん大きくなっていったぷーすけくん。とても賢いそうだが、唯一困るのは、留守番が苦手なことだという。「なんだかとても切ない思いになってしまうんです」