きょうだい犬が奇跡の再会…1年で手放され、さみしい思いをしていた弟をお姉ちゃんが呼んだ

岡部 充代 岡部 充代

 茶色でスムースコートのLilyちゃんと、ブラックタンでロングコートの大吉君。毛の色も長さも、体の大きさだって違う。でも、2匹は同胎のきょうだい犬です。お父さんがチワワで、お母さんがチワワとミニチュア・ピンシャーのミックス。つまり、4分の1だけミニピンの血が入っています。最近はチワックス(チワワ×ダックスフント)、マルプー(マルチーズ×トイプードル)などミックス犬が人気ですが、「チワピン」はあまり多くないかもしれません。

 そんなチワピンを家族に迎えたのは、大阪市に住む船井仁津子さん。スムースチワワを探してブリーダーを訪ね歩いていたとき、チワピンに出会い一目惚れしたそうです。2018年1月、Lilyちゃんとの生活が始まりました。

 そう、そのとき迎えたのはLilyちゃんだけ。では、なぜ今、大吉君も船井さんの家族になっているのでしょうか?

  18年の暮れ、2匹目を迎えたいと考えるようになった船井さんは、里親募集サイトをチェックしていました。そこで、1匹のチワピンに目が留まります。あまり多くはないチワピン、しかも年齢はLilyちゃんと同じ1歳。「ロングコートで普通のチワワにしか見えなかったけれど、なぜか気になって」。船井さんは投稿者に連絡を入れました。すると…。

 「先住犬について聞かれたので、メールでLilyの画像を送ったら、『もしかして、高槻のブリーダーさんからですか?』って。『ハイ』と答えたら、『きょうだいです』と返ってきて驚きました。ブリーダーさんに聞いて、以前から私のインスタ(インスタグラム)を見ていたそうなんです」

 そのチワピンこそが、大吉君。投稿者は同じ大阪在住でしたから、いつか、どこかで会う可能性もゼロではありませんでしたが、まさか里親募集サイトでつながるとは…船井さんは「メールを読んで鳥肌が立ちました。実は赤ちゃんのとき、ブリーダーさんのところで大吉にも会っていたんですけどね」と、当時のことを振り返ります。

 

 せっかくブリーダーから迎えた犬を、わずか1年で手放そうとしていた大吉君の元家族。どのような理由があったのか、気になります。

 「20代の若いご夫婦で、赤ちゃんが生まれたらアレルギーがあったから、という説明でしたが、私の中には疑う気持ちもありました。家を建てるために、奥さんの実家かどこかでずっとケージに入れていたと言っていましたし、インスタも見たのですが、大吉の登場回数がとても少なかったんです。普通、犬を飼っていたら、たくさん載せたくなりませんか?」

 たしかに、ペットを飼っている人たちのSNSには、「これでもか!」というくらいペットの写真が載せられているもの。船井さんが違和感を覚えたのも無理はありません。

 初めて大吉君と対面したときも、その印象はぬぐえませんでした。「表情が乏しかったんです。オモチャを持ってきていましたが、大吉には全くサイズが合っていませんでしたし」。船井さんに迷いはありませんでした。大吉君を引き取ると決め、その日のうちに連れて帰ったそうです。

 

 約1年の間、大吉君はあまり構ってもらえなかったのでしょう。しつけらしいことは何もできておらず、名前を呼んでも振り向かない、トイレは家の中であちこちにする、何かあるとすぐに噛む…しばらくは大変だったようです。それでも、ドッグトレーナーに相談しながら根気よく教えていくと、いろいろなことを覚えてくれました。今では、Lilyちゃんと並んでオスワリをし、「スピン」の合図でクルリと一回転します。

 「Lilyは初めての犬にはかなり吠えるのですが、大吉にはあまり吠えませんでした。きょうだいって分かったんですかね。大吉が悪いことをすると、Lilyが叱ってくれるんですよ。オモチャを引っ張り合って遊ぶときは、大吉のほうが体が大きいのに、必ずLilyが勝ちますし、Lilyがお姉さんで、大吉が弟だって、両方がそう思っているみたいですね」

  さみしい思いをしていた大吉君を、Lilyちゃんが呼んだのかもしれません。船井さんは大吉君を迎えたとき、何をするにもLilyちゃんを優先すると決めました。人間の赤ちゃんが生まれたとき、お兄ちゃんやお姉ちゃんに配慮するのと同じです。船井さんにとって、Lilyちゃんと大吉君はどちらもかけがえのない“家族”ですから。

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