日仏合作映画「真実」公開迫る!この際だから是枝裕和監督にいろいろ聞いてみよう

黒川 裕生 黒川 裕生

―以前あるインタビューで、日本の映画業界が国内のマーケットのことばかり考えている現状への危機感を語っていました。作り手や配給会社に海外へ出て行く意欲がほとんどない、と。今回の「真実」の試みは、そうした状況に一石を投じるようなものになったと思いますか?

「一石を投じるために撮ってるわけじゃないけどね(笑)。でもいろいろやって学ぶことがあった。さっきの働き方の問題もそう。やっぱり、日本の中だけで撮っていると、それが当たり前になっちゃうから、僕だけじゃなく、海外で撮っている人の経験が、国内の映画制作にフィードバックされていく形になればいいなとは思ってますよ。日本の映画は今、すごく閉じてるから」

―俺に続け、という気持ちはありますか?

「いや、それはもう、それぞれの監督の問題意識の持ち方によるから。外に出たくない人を無理に引っ張っていってもしょうがない。ただ、いろんな意味で視界は広がる。やめといた方がいいよ、とは絶対言わない」

―昨日(9月17日)NHKで、ご自身が師と仰ぐケン・ローチ監督と対談しているのを拝見しました。ローチ監督はイギリスの貧困や格差をテーマにした「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年のカンヌ最高賞)で、「国から助成金をもらっておいて、反イギリス的な映画を作った」と保守系メディアなどからバッシングを受けたそうですが、是枝監督も昨年、「万引き家族」で全く同じような批判にさらされましたね。

「ケン・ローチが受けたバッシングに比べれば、俺のバッシングなんて大したことない。勇気づけられるよ(笑)」

「そりゃ、腹は立つよ。腹は立つけど、それはやっぱり、映画という文化を、というより文化というものを、私たちの社会の共有財産としてどう存続させていくか、発展させていくかという意識で語ってこなかった私たちの責任だと捉えるしかない。映画は消費されていくものだとしか思われていないからさ。そんなものになんで税金使うんだって発想でしょ」

「だけどフランスや韓国には、放置していたら私たちの大切な文化である『映画』が滅んでしまうかもしれないという危機感と、それをどうやって守っていくかという非常に明快なビジョンがある。国も、業界も、見る側も、それをわかった上で、映画入場料の一部を劇場支援や映画の多様性確保のために回す仕組みができている。そういう考え方がちゃんと定着している国と、そうでない国との差を痛感しますけど、じゃあやる気が失せるか、と言われると、逆ですね」

―燃えるタイプですか。

「意外とそのへんはタフなんですよ。理不尽だなと思うことはいろいろありますよ、正直言うとね。だけど、しょうがないじゃないですか。助成金をもらって僕がしなければいけないのは、いい映画を作ること。お礼を言いに行くことが必要なわけじゃない。行きたきゃ行けばいいとは思うけど、それは全然本質じゃない」

―その「国からの祝意を辞退する」という是枝監督の行動も、またハレーションを起こしましたが。

「そうそう、それは……もう『どうかしてる!』としか言いようがない。だけど、まあ、いい映画を作ることがお礼だから。いい映画を作っていきたいね」

…残念ながらここで時間切れです。ありがとうございました。

是枝監督自身が「秋のパリを油彩ではなく水彩で描いたような作品」と語る「真実」は、10月11日(金)ロードショー。

▪️映画「真実」公式サイト https://gaga.ne.jp/shinjitsu/

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