おどろおどろしいポスターとどこか間の抜けたタイトル、そしてただ事ではないテンションの予告編で、公開前から一部映画ファンの間で話題沸騰中のホラー映画「みぽりん」が、いよいよ7日(土)、神戸の元町映画館で公開初日を迎える。それに先立ち、2日夜、神戸・三宮のライブハウス「KOBE BLUEPORT」で、劇中に登場する架空の声優地下アイドルユニット「Oh!それミーオ!」や松本大樹監督らが歌や小芝居を披露するイベントが開催され、「みぽらー」と呼ばれるファンが大勢駆けつけた。大盛況のうちにイベントを終えた松本監督は、興奮を抑え切れずこんなことを口走ってしまった。「公開までこのまま騙し通せそうですねえ!うしし!」
「みぽりん」は神戸在住の松本監督による処女作で、歌がヘタクソなアイドルが、みぽりんと名乗る謎のボイストレーナーに拉致監禁される低予算・自主制作のホラー映画。六甲山の山荘をはじめ、全編神戸で撮影したことを最大限利用し、神戸では「ご当地映画」だと強弁しながら松本監督やキャストらが日々どこかに出没しては宣伝に汗を流している。
このなりふり構わず頑張る関係者の姿に胸を打たれ、公開前でまだほとんど誰も作品を見ていないにも関わらず、勝手に応援する人が続出。彼らは「みぽらー」を自称し、Twitterなどで熱いメッセージを投稿しては盛り上げに一役買っているのだ
「もしかして、すごい作品なのかな?」
「公開されたら、『カメラを止めるな!』みたいに大化けするのかな?」
そんな“誤解”が少しずつ広まっていくのを眺めてはほくそ笑む松本監督。自身が手掛けた脚本や演出の穴、拙さは自らも認めるところであり、それでも「愛すべきB級作品に仕上がった」と言い切る天晴れな前向きさで、全力疾走を続けている。「ぶっちゃけた話、『みぽりん』は今、虚像が独り歩きしている状態。公開されたら、このお祭り騒ぎもきっと終わることでしょう…」
この日のイベントでは、みぽりん役の垣尾麻美さん、「Oh!それミーオ!」役の津田晴香さん、mayuさんをはじめ、出演者が惜しげもなく続々と登場。歌や小芝居で、詰めかけた数十人のみぽらーたちを熱狂させた。終演後も物販やサイン会、チェキの撮影会などが続き、熱い余韻がいつまでも冷めることはなかった。
会場では、HMV三宮VIVREとタワーレコード神戸店がタッグを組んで挿入歌CDを販売。「神戸の映画シーンを盛り上げてくれる『みぽりん』のためなら」と垣根を越えて力強くうなずき合う田中一広さん(HMV)と黒田朋規さん(タワレコ)だが、2人ともまだ本編は見ていないという。公開後、彼らが後悔しないことを祈るばかりである。
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実際、ファンは「みぽりん」の何に惹かれているのだろう。滋賀県から参加したという熱心なみぽらーのチョップトップさん(40代、男性)に話を聞くことができた。