スーパーの広告の中でとりわけ大きく表示されている「特売」の文字と商品の写真。「安いやん!」と飛びつく前にちょっと待て。とある店舗の惣菜部門でアルバイトをしていた経験からいうと、それは特売のために仕入れた、別の商品かもしれない。
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織り込み広告を広げてみると、とりわけ大きな写真や文字で表示されている商品がある。集客を狙うため、とくに値段を安く設定する特売商品だ。仮称「港が見えるスーパー」の惣菜売り場でも、エビフライやコロッケがよく特売になった。だが、本当にお得なのか? というと、ちょっと疑問である。安い商品には、それなりの理由があるからだ。
「今日はエビフライ5尾で298円、パック売りか」
広告が入る週の半ばと週末は、出勤したら、まずは販売計画書に目を通して特売品を確認する。港が見えるスーパーでは、エビフライの定番は平台でバラ売り。1尾100円である。定番とは、値下げをしない平常の売り方を意味する業界用語だ。「5尾で298円、パック売り」というのは、この日はバラ売りをせず、5尾をパックに盛り付けて298円の値札を付けて売ることを意味する。単純計算で合計500円になる商品を298円で売るのだから、お客さんからすればずいぶんお得に見える。
ところが、揚がってきたエビフライを見ると、定番のエビフライより明らかにひとまわり小さい。パン粉も多めについているような気がする。
「これ、小さくない?」というより早く、揚げ物を担当するパートのおばちゃんが口を開いた。
「ちっちゃいなぁ、これ」
「特売用は、それやねん」
チーフが返す。
「なんや、定番より小さいんかいな」
おばちゃんが苦笑いする。
そう、定番で1尾100円のエビフライを5尾298円で売ったら、どう考えても赤字である。だから特売用に原価の安いエビフライを仕入れるのだ。ちなみに天ぷらは手作業で衣をつけて揚げるのだが、フライはすでにパン粉までついた半完成品を仕入れて、バックヤードでの作業は「揚げるだけ」となっている。
広告には「エビフライ5尾入り298円」と書いてあるだけで、定番が安くなるとは謳っていない。ウソはついていないという理屈だ。