―色はどうやってつけていくのですか?
「天然色素を使用しています。これは水分の配合やあんに混ぜ合わせていく工程が人工のものに比べて難しいのですが、もともと子どもに食べさせたくて作り始めましたからやはり少しでも安全なものをと」
―色に透明感がありますね
「それは『ぼかし』の技術を使っているからです。練り切りはこの『ぼかし』の技術が一番難しく、一番大事です。例えば向日葵の花びらの部分を作るときは黄色く色づけたあんの上にごく少量の白あんを載せて伸ばしていきます。ここが腕の見せ所で、白から黄色に変わっていくグラデーションの諧調を0にするか100にするかで作品の見え方ががらりと変わる。前者だと単純で平面的ですが、後者だと、本当に上手くいけば絵画のような奥行きと深みが生まれます」
作品のインスピレーションは自宅のキッチンの窓から見える街の樹木の色が移り変わっていくさまや、花や虫や、お子さんと買いに行くシールの模様などから得る、といいます。普段の生活に神経を配り、ごく小さな変化やそこに潜む喜びを見出していく心が作品に映し出されているのでしょう。
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昨年はNHKの番組「ごごナマ」にも練り切り講師として登場。今年の七月には大阪学院大学の開催する「ウーマンキャリアアッププログラム ステキ☆塾2019」で練り切りのワークショップを開き、進路に悩む女子学生の様々な質問にも答えるなど活動の幅をますます広げている藤本さん。昔も今も一番大切にしていることは自分の直感を信じること、といいます。
「練り切りは手のひらの中で作る小さな世界。でもそこに自分が生きていくうちに感じる様々な思いを込めることができます。同じ「春」というテーマで同じ材料を使って同じ工程で作っても、できてくるものは全部違う。でもそれで良いんです、自分の『好き』を大事に作って欲しいし、それはきっとその人の生き方にも影響を与えてくるのではないかなと思います」
◆「和菓子・練り切り教室 神戸市六甲アイランド HALE」https://hale336.amebaownd.com/