世界のファッションを斬る!? ツッコミどころ満載、京都の「ドレス・コード」展

沢田 眉香子 沢田 眉香子

 「京都服飾文化研究財団」(京都市下京区)のファッション・コレクションから眺める、リッチで刺激的な展覧会『ドレス・コード? ー着る人たちのゲーム』展が「京都国立近代美術館」(京都市左京区)で10月14日までおこなわれています。

 「シャネル」「ルイ ヴィトン」「コム デ ギャルソン」など、同財団のコレクションは一流ブランドぞろい。ファッション誌で見たドレスの実物と、編集者・都築響一、美術家・森村泰昌、写真家・シンディ・シャーマンらの写真など、アート作品も関連させて展示されています。

 私たちが日々こなしている服選びは、暗黙のルールや駆け引きのような「ゲーム」的要素を持っています。見る、あるいは見られるといった、自己と他者のコミュニケーションをファッションととらえるなら、そこには、いろんな意味が介在します。戦闘服だった迷彩柄がカジュアルファッションになり、やがてハイブランドに取り入れられるような変化。ハイブランドがアートやストリートカルチャーとコラボレ−ションするような交換。少なからずファッションの変遷を眺めてきた筆者が、度肝を抜かれたその展示作品にひと言。大胆な展示内容を紹介します。

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 大量のゴミを放出しているファッション業界。「なら裸じゃだめか?」と幕開けからメッセージ性のある作品の展示でスタート。

 漫画『イノサン』とのコラボ展示。絵に描いてみて分かる、コミックよりコミック的な現物の18世紀ロココ衣装。ほんとにこんなドレス着てたの?

 「男性用スーツを展示するモード展は画期的」(主催者)というが、社会規範のドレス・コードは、必ずやそれをはみ出したい欲望とせめぎ合う。それが右から2番目の人。1940年代、アメリカの黒人の間で流行ったズートスーツは、学ランのボンタンと通底するセンス。

 こちら、女性の切り札ともいえるシャネルスーツたち。オリジナルはどーれだ? 正解は、赤と奥のツイード。右端は「ヨウジヤマモト」。

 「戦闘服だった迷彩柄が、ハイファッションに」の実例多数。手前は「ジャン=ポール・ゴルチエ」のカモフラージュ柄の浴衣。30年前なら、イキがって着てたかもしれません。

 ロゴって何? スケボーファッションブランド「Supreme」のロゴがプリントされたルイ ヴィトンのバッグを見て、「はあ?」と思うかどうか、あなたのロゴ信仰度をためす試金石。

 ヴィトンの「LV」をもじったと思われる、「ヨウジヤマモト」の「YY」プリントドレス。「これパロディ…です?」と思わず首をかしげさせる腰の引け感が、ヨウジさんの奥ゆかしさか。

 腰の引けと無縁の「コム デ ギャルソン」。インクジェットプリントがテキスタイルと絵画のボーダーを消失させたことを、高橋真琴、水墨画、アルチンボルド柄のドレスで高らかに宣言。ちなみに最近はインクジェットプリントで染めても友禅と呼ぶそうです。デザイナーの川久保玲さん、ショッキング友禅の着物もたのんます。

 「よくあるミュージアムグッズかと思ったら、実は、アーティストとルイ ヴィトンのコラボなんです」とうれしそうな担当者。そのアーティストって、ジェフ・クーンズですよ!? アクリルケースに陳列されているおかげで、80年代のネオ・ジオ作品『ツー・ボール 50/50タンク』の関連作品みたいに見えます。「おいくらだったんですか?」という質問に「わかりません」って、そりゃ残念! このぶっさいくなバッグがどれだけお高いのか? それがこの「作品」の、いちばんザワザワさせるポイントでは?

 ツッパリファッションにインスパイアされた「ヘルムート・ラング」(左)、「ジュンヤ ワタナベ コム デ ギャルソン」(右)。写真とともに展示。バリバリだぜー!

 オトーさん、この服グッチですよ、グッチ! あらゆる手を出し尽くしたファッションの行き着く先を暗示するかのような、全部盛りリミックス・モード。

 こちらは「ユイマナカザト」のホログラムシートのドレス。食の世界では、食材のリミックスと実験で残飯寸前の「イノベーティブキュイジーヌ」が盛んだが、服は大丈夫そうだ。

 展示作品のなかで、もっとも批評性ズバリだったのが、都築響一のファッション風俗写真。ホームレスとロリータファッション。どちらもクールジャパンか。

 さて、こちらの展示作品は会場の一部。ぜひ実際に目で見て、世界のモードの変遷や、多様性を実感してくださいね。

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