閉ざされた邸宅で起きていた多頭飼育崩壊から救出 片目を失った美しい黒猫の、太く短い生き様

渡辺 陽 渡辺 陽

ウニコちゃん(享年2歳・メス)は、大阪府の多頭飼育崩壊の現場で保護された。2022年6月、保護活動をしているみかじゅさんは、ある人から「実家の家の前の一人暮らしのお婆さんが猫を増やしている。以前声掛けしたが取り合ってもらえず、子猫がうろうろしていて気になる。助けてほしい。」という相談を受けた。面識のない方の相談は受けていないので迷ったが、ひとまず状況を聞きに行くことにしたという。

「塀に囲まれた大きい家で、中の様子がわからなかったため、ご本人からお話を聞くためにボランティア仲間が手紙を投函しました。すると、意外にもすぐにお婆さんから連絡があり、ご自身も困っておられて助けてほしいとSOSを出されました。」

みかじゅさんは、仲間と共にすぐに現状を聞きに行くことにした。お婆さんは、夫や両親を亡くし、大きな敷地に一人で住んでいた。穏やかで優しい人で、なんとなく野良猫に餌をあげているうちに、どんどん増えてしまったということだった。

「私たちが介入する前に、保健所からも指導が入って相談したそうです。とにかく餌をあげないようにと言われたそうです。そうではなくて、まずは不妊手術をしないと解決にはなりません。結局、手術もどうすればよいか分からず、このような状態になってしまったということでした。」

みかじゅさんは、行政の対応が納得できなかったが、集落の中でとにかく敷地が広く、小屋や蔵や離れがあるので、野良猫にとっては安全で快適で、隠れるところには困らない場所だと思った。お婆さんは、「猫はそんなに好きではない」と言いつつ、ささみを蒸したものなど、毎日ごはんをあげていたそうだ。

太く短く生きた猫

現場には、ざっと見た感じ30匹を超える猫がいた。そのうち保護が必要な子猫が13匹いて、残りの大人猫は不妊手術する必要があった。みかじゅさんたちボランティアは、準備に取り掛かった。

「6月から初めて5回ほど通い、大人猫は20匹超、子猫を13匹を保護しました。子猫たちは5人のボランティアが手分けして引き受け、ケアをしたり人馴れ修行をしたりしてくれました。その後、みんな里親さんが決まり、最後に残った白石くんも2023年2月に正式譲渡されました」

みかじゅさんは、現場で片目の眼球が潰れた美しい黒猫に会った。その子がウニコちゃんだった。お婆さんは獣医師には診せていなかったが、目を洗ってケアをしていたという。

「そのまま放っておけず、保護して眼球を摘出手術をしたのですが、白血病キャリアの子だったので外に戻すことはできませんでした。一緒に保護したボランティアさんが引き受けてくれました。ウニコと名付けてもらい、白血病の子たちが暮らす部屋のアイドル的存在になったそうです。でも、病には打ち勝つことができず、残念ながら亡くなりました」

ウニコちゃんを預かったボランティアのwinさんは、「ウニコは、最後まで好きなものを食べて、快適な部屋で猫生を太く短く生ききりました」と言う。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース