日本政府は韓国を「ホワイト国」(輸出優遇国)から外す輸出規制強化を決めた。懸念される日韓関係の行方はどうなるのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏は当サイトの取材に対し、あくまで韓国側に貿易上の問題があったための措置であって、元徴用工問題などに対する「政治的な報復」でないことを双方で認識することが重要だと指摘。改めて説明を徹底し、日韓両国で〝誤解〟を解いてくことの必要性を説いた。
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韓国側は、日本の輸出規制強化措置はWTO(世界貿易機関)規範に反するものとしているが、日本側がやっていることに全く問題はない。WTOの基準に照らし合わせた適正なものだ。むしろ、これまで韓国の輸出がずさんであったため、やらなければならないことだった。それを、これまでやってこなかった日本側にも、その点において〝ずさん〟さはあった。
韓国がホワイト国のカテゴリーに入ったのは2004年。世界で27か国、アジアでは韓国だけをホワイト国に指定した。ある意味、特別な扱いだった。日韓共に友好国として経済的に発展し、お互いにウインウインの関係を築きましょうということだった。
今回、その特別扱いをやめることになった。その理由が今、問われている。一つは韓国が貿易上の問題点を改めるという対応をとっていなかったこと。韓国側は第3国への横流し的な輸出をしていたが、国内での規制が緩く、韓国企業へのペナルティーも甘かった。
そもそも、今回のホワイト国除外は、本来、やるべき対応を韓国がやらなかったことに起因する。そして、韓国側が違法行為をした時、日本側のペナルティーや規制が甘かったこともある。そこのところが一番の問題なのたが、あまり語られていない。安倍政権に対して批判的なメディアは「政治的な報復」と指摘するが、そうではない。純粋に貿易上の問題なのだが、このタイミング的に、ある種の政治的思惑や意図があると思われている。
元徴用工や従軍慰安婦の問題、韓国海軍による自衛隊へのレーダー照射といったトラブルが山積している中、日韓は激しく対立して、言い分も違っている。それらに対する「報復」と、とられてもおかしくない経緯はあった。
では、どうやって元の状態に戻すのか。そのことがまだ、現時点で指示されていない。そこはまた、日本側に欠けていることだ。日米に比べ、韓国はグローバル・スタンダードに達していないから、それを改善し、韓国のルールを変えて欲しいということを、日本側がはっきり示してこなかった。だから、韓国側でも誤解が生じている。日本側からの説明を欠いて、韓国側に「気づけ」というのは違う。
日本政府は「出口戦略」(損害を最小限にして撤退する戦略)を考えているだろう。ホワイト国からの除外で対立激化を通常のものとするか、将来的な関係改善を想定しているか。おそらく後者のはずであろう。
だが、貿易上の問題改善と元徴用工などの問題、その両者がリンクしてしまっている。なぜ、このタイミングかを合理的に説明しなければ、「もめごとへの報復ではない」と言っても理解されない。日韓関係が元の状態に戻るためには、なぜ、ここに至ったかをきちんと説明していかなければならない。今 このタイミングで韓国の特別扱いをやめる背景には「政治的な思惑がある」という思い込みがあり、それが日韓の対立を激しくしているが、そうではないのだ。そこが一番の懸念材料である。