福岡・原鶴温泉のシニア看板猫たち ツヤツヤの毛並みと長寿の秘訣は飲泉?

九州温泉ねこめぐり

西松 宏 西松 宏

 福岡県朝倉市にある原鶴温泉は、筑後川沿いにある静かな温泉郷。一説によると「ケガをした鶴が浸かり、キズを癒して飛び立ったあとの水たまりが温泉だった」といった開湯の由来がある。川にかかる橋を渡ってすぐ右手の「湯どころ 喜仙」では、グレー白の「くるみ」(メス、15歳)と、黒猫の「黒太(くろた)」(オス、推定14歳)のシニア看板猫たちが出迎えてくれる。

 創業60年を迎える「湯どころ 喜仙」は、宿泊(全7室)や日帰り休憩、立ち寄り湯も可能な家族経営のアットホームな旅館。ホームページはつくらず、温泉や看板猫についても特にPRをしているわけではないが、冬場になると行列ができるほど、温泉通の間では泉質の良さで一目置かれている。

 原鶴温泉は、弱アルカリ性単純泉と単純硫黄泉の2つの泉質を合わせ持つ「ダブル美肌の湯」として知られている。同館は加水なしの源泉純度100%の掛け流しで、ラドン含有量が多いのが特長。pH値(酸性度やアルカリ性度を示す数値。0から7が酸性、7が中性で、7から14はアルカリ性)9.1から9.3のヌルヌルのアルカリ性泉で、ラドンを多く含む源泉は全国的にも貴重だ。同館の植杉卓矢さん(33)は、「体によい放射性の気体成分のラドンを多く含んでいて、40度以下の入りやすいお湯なんですよ。入浴して10分ほどたつと体が内側からポカポカになります」と教えてくれた。

 くるみは、15年前、同館の敷地内で野良猫が生んだ子。目もまだ開かないころ保護した。黒太はその1年後、梅雨時期のどしゃぶりの日、玄関前でずぶぬれになって鳴いていた。

 「黒太は手のひらに乗るほどの小ささで、見つけたときは『こんなかわいい子猫はめったにいない』と家族で話したくらい。でもよくみると、おなかがバババっと、とても速く動いていたので、これはおかしいと病院に連れていくと、先生いわく『おそらく車にひかれたばかりで内臓も損傷しているようだ。大掛かりな手術になる。助かる見込みは10〜20%くらい』といわれたんです」(卓矢さん)

 「もしかしたら飼い主が探しているかもしれない」、「このまま見殺しになんてできない」と卓矢さんは家族と相談し、手術を決断。かなりの費用がかかったが、なんとか命を助けることができた。結局、飼い主が現れることはなく、同館で飼われることに。今もおなかの真ん中あたりをさわると、当時の後遺症で肋骨が飛び出ているのがわかるが、生活に支障はなく、黒太はくるみとともに元気に暮らしている。

 「くるみは人に体を触ってほしい、かまってちゃんですね。黒太はちょっと変わり者。僕の膝の上で気持ちよさそうにしてたのに、急にウーッとうなって機嫌悪くなったり。他の猫と違ってエサでご機嫌もとれません。猫ってほんと、奥深く、これが魅力ですよね」と卓矢さんは笑う。

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