車のボンネットの中で生まれた子猫たち レスキュー後たくましく育つ

渡辺 陽 渡辺 陽

車のボンネットの中で生まれた4匹の子猫たち。車の持ち主の久保さんは、子猫をたちを捕獲して必死で育て、母猫にTNRを施した。母猫の強い母性と、子猫たちの生命力に感銘を受けたという。

猫が車の中で出産

2019年4月28日、春の冷たい雨が朝からしとしと降り続く日だった。香川県に住む久保さんは、隣の人から「久保さんの車の中からニャアニャア、猫の鳴き声がする」と言われた。不審に思いながらボンネットを開けると、中は猫の毛だらけ、ありとあらゆる配線が切られていて、バンパーとフェンダーの間に挟まった小さな子猫の手が見えた。驚いた久保さんは、すぐに車屋さんを呼んで、子猫を助けるためにバンパーを取り外してもらった。最初にボトンと地面に落ちたのは、三毛猫の子猫だった。

片手が挟まっていた子猫も無事取り出すことができたが、元気がなく、指で触ったら少しだけ動いた。雨に濡れていたので、ドライヤーで乾かして、すぐに動物病院に連れて行ったという。

他にも2匹の白猫の子猫がいたが、母猫がどこかへ連れ去っていた。

「車屋さんには、『“猫バン”(車を使う前にボンネットを叩く)をしなかったんやなあ』と言われました」

子猫を奪われたと思っている母猫

子猫たちは、体重約95g、片手に乗せることができる大きさだった。手が挟まっていた子猫を診ると、獣医師は「この子は死にますよ」と言った。

その後、久保さんは、奥さんと2人で、昼夜の別なく3時間おきに子猫たちの授乳をした。最初は哺乳瓶を使ったが、1回につき30分以上かかるため、獣医に相談して、カテーテルと注射器をを使って授乳することにした。3時間おきというのは変わらなかったが、3分ほどでミルクを与えることができたという。

久保さんは、猫ボランティアさんに捕獲機などを借りて、母猫にTNRを施した。
「お母さん猫のことを狙っているオス猫がいて、このままでは、また妊娠する可能性があったんです」

母猫は、すんなり捕獲できたが、子猫たちは捕獲機に入らなかった。車庫まで誘導して、1日がかりで物陰にいたところを捕まえた。
「お母さん猫は、私のことを、子猫たちを奪った敵だと思っているようでした。捕獲した時も、ケージのすき間から手を出して、ものすごい力でひっかいてきたので、厚手のゴム手袋が破れてしまいました。TNRした後も、家の横でじーっと私のことをにらみつけて、ニャアニャアと鳴いていました。お母さんは強いですね。オス猫は何をやっているんだ?と思いました」

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