2匹の子猫を保護 母猫は大捕り物の末、避妊手術して地域猫へ

渡辺 陽 渡辺 陽

 次々と子猫を産む野良猫のお母さん。人間から子猫たちを守ろうと必死に生きているのだが、それゆえに、捕獲や保護をする時は慎重にならなければならない。

必死に子猫を守る母猫

 長崎県に住む佐藤さん(仮名)は、ある猫のことが気になっていた。野良猫なのだが、子猫を出産後、気が付けばまたすぐに出産したからだ。

 佐藤さんは、数匹の保護猫と暮らしているが、野良猫を捕獲をしたこともなく、方法も知らなかった。しかし、「なんとかしなければ、子猫がどんどん増えていく」と案じていた。

 小さな子猫たちは母猫とあちらこちら転々と移動しているようで、姿を見かけることがあった。

 「親子を見つけても、母猫と目が合うと、その日の夜に子猫を連れて移動してしまいました。ずっと追っていたのですが途中で見失って、心配したのですが、また近所で見かけました。母猫は一生懸命、子猫を守っているのですね」

 小雨降る中、まずは子猫たちを捕獲

 2018年5月、しとしとと春の小雨が降り続く中、佐藤さんは、マンションの非常階段の下の草むらで子猫たちを発見、抱き上げて無事に保護することができたという。

 生後約1カ月で保護された子猫たちは、ジュエルとステラと名付けられた。2匹ともコクシジウムという腸に巣食う寄生虫にやられて下痢が続いていたが回復した。

 1歳になった2匹。ステラくんは元気いっぱいで活発な子だが、恐がりだ。病院に行く時も怖がって、キャリーの中でハタハタと落着きなく動き回る。ジュエルくんは、猫に対しては少し控えめな感じだが度胸がある。来客があると、「誰、誰なの?」と、率先してお出迎えするという。

 大変だった母猫のTNR

 佐藤さんは、子猫たちを保護した後も、ずっと母猫のことが気がかりだった。動物病院の先生や動物愛護団体にも相談したが、結局は自分一人で捕獲しないとどうしようもなかった。初めての野良猫の捕獲。佐藤さんは不安だったという。

 猫つながりで知り合った人にも相談したところ、知り合いに野良猫のボランティアさんとつながることができ、佐藤さんは初めてのTNR(trap=捕獲、neuter=不妊去勢、release=解放の頭文字)を決行した。

 2018年10月、佐藤さんは、母猫がどこでご飯を食べているのかよく分からなかったが、よく見かける場所にボランティアとともに捕獲器を設置した。やっとの思いで、母猫を捕獲することができた。

 TNRのため不妊手術は、子宮が奥のほうにあったため思わぬ大手術になってしまった。

 「すぐには元いた場所に戻すことができなかったので、捕獲器に入れて5日間ほどうちで世話をしました。でも、生粋の野良猫だったので、激しく威嚇してきたんです」

  シャーッと威嚇してきた猫は、引っ掻こうとするだけでなく、噛みつかんばかりの勢い。エサや水も捕獲器の入り口付近に調理用のトングを使って押し入れた。排泄も捕獲器の中で済ませなければならず、捕獲器の掃除も大変だった。

 捕獲から術後まで数多くの苦労をしたが、TNRは無事に完了、母猫は、いまも元気に地域猫として暮らしている。その姿を時々見かけると、佐藤さんは嬉しくなるという。

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