17年9月19日の「しまうまのおしり」は、焼いた卵の白身とノリを活用。同年11月2日の「おとうちゃん」は、小山田さんの顔をちくわの目やウインナーの鼻と口、葉物野菜のひげで表した。18年3月27日の指示書は、カンブリア紀の海洋生物「ピカイア」。ウナギともナメクジともつかない独特の形状の生き物だ。難問。だが慌ただしい朝、急いで答を見いださねばならない。小山田さんは形のよく似た鶏肉を探し出してソテーし、解決した。
小山田さんは「『お父ちゃん弁当』を始めた当時、共謀罪がニュースで話題になっていましたが、次男を喜ばせるために長女と行った『謀[たくら]み』は、本当に楽しい思い出です。毎朝の労働も心の負担が軽くなる。小学生の長女が考えていることや感じていることへの気づきも多かったです。姉と弟の間の会話にもつながりました」と、弁当がはぐくんだ家族のつながりを、楽しげに語る。
長女の指示書による「お父ちゃん弁当」は、次男が今春に卒園したことでいったん終了した。小山田さんは今も、高校生の長男のために弁当を作っている。お嬢さんに指示書を描いてもらわないんですか? 「長女はやる気満々だったんですが、長男が嫌がりまして。思春期ですからね」
今は、長男と弁当を通してコミュニケーションを取るため、いろいろと新しい「謀み」を模索しているところ、という。
弁当づくり、世のお父さん方も一度挑戦してみては。お子さんとの対話になりますよ。
展示は、1990年代の京都でジェンダーやセクシャリティーをテーマに展開された芸術活動を紹介する「ヒューマンライツ&リブ博物館 アートスケープ資料が語るハストリーズ」の一環で行われている。
「お父ちゃん弁当」は、福島県猪苗代町の「はじまりの美術館」で7月27日から11月10日まで開かれるグループ展「わくわくなおもわく」でも展示される予定。