流しの若手マジシャンがすごいと夜の街で話題 正体は神戸の現役大学生だった

黒川 裕生 黒川 裕生
身近な物を使ったマジックで場を盛り上げる木澤亮太さん
身近な物を使ったマジックで場を盛り上げる木澤亮太さん

 夜な夜な神戸や大阪の酒場にふらりと現れては、目の前で超絶技巧のマジックを披露してくれる一人の若者がいる。神戸在住の大学生、木澤亮太さん(20)。中学生のときにテレビで見たセロのマジックに衝撃を受け、自分でもできるようになりたいと独学で習得したという。週1回、バーテンダー(兼マジシャン)として働いている神戸・三宮のバー「Antica」で本人を直撃した。

 「こんばんは、よろしくお願いします」

 少し茶色く染めた髪に、穏やかな笑みを絶やさない涼しげな目元。黒いシャツと黒いパンツ、黒いジャケットがとてもよく似合っている。これでマジックもできてしまうのか。対面した瞬間、私は「負けた」と思った。

 セロの影響でマジックを始めた木澤さん。最初は手のひらにコインやトランプを仕込んで生活し、家族にバレたらアウト、という謎の鍛錬を黙々と重ねた。人から見えなければいい、というだけではなく、箸を使った食事など、生活のあらゆる場面をそのまま不自然な挙動にならないよう乗り切るのだ。「まあちょっとした変態ですね」と木澤さんは笑うが、まるで何も持っていないかのような顔でコインやトランプを隠し持つマジシャンとしての基本的なスキルは、こうして身につけたという。

 得意とするのは、やはりコイン、トランプを使ったクロースアップマジックだ。客の手の中に入れたトランプの束が、一瞬にして丸ごと別の物に入れ替わるマジックなどは、どこで披露しても大好評。この日もバーカウンターにいた女性の目を丸くさせ、キャーキャー言われていた。

 となるとやはり、よく言われるのが「モテるでしょう」である。

 「モテるかモテないかといえば、モテるのかもしれません」。木澤さん、そこは否定しない。だが「その場ではモテますが、マジシャンって人を騙す仕事みたいに思われているので、結局は信用されず、恋人はなかなかできないんですよ」とも。ふーん、本当かな?(笑)

 木澤さんがマジックを人前で披露するようになったのは、実は1年ほど前から。当時バイトをしていたレストランで、頼まれて客の前でやったのが初めてだったという。「それまでは家の中で、ひたすら独りでやってました。僕、もともと陰キャ(性格が陰気な人)なんですよ」。ふーん、本当かな?(笑)

 聞けば、人前でやる前は専らマジックの動画をSNSでアップし、マジックの先輩からアドバイスをもらうなどして交流していたという。「テレビに出ていなくても、すごい人っていくらでもいるんですよ」と木澤さんは言う。「そういう人たちは、人前でやるよりマジックの『原理』を楽しんでいる。彼らと親交を深める中で、僕自身もマジックの魅力にどんどんハマッていきました」

 今春からは、マジシャンの活動に本腰を入れて取り組むように。マジックの新しいアイデアを販売するなど、今後は活動の幅をもっと広げていこうと考えている。ちなみに言い忘れていたが、マジシャンとしては、木澤さんは「滝沢涼」と名乗っている。「毎週水曜日にはここ(Antica)にいます。他は梅田のビアホール、あちこちの居酒屋やスナックなどでも活動しているので、よかったら会いに来てください」

■Antica 神戸市中央区加納町4-7-4 ゴールドプラザビル1階 Tel:078-321-1119

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