「ファイト、一発」リポビタンDのCMが“さわやか路線”で2年…背景にあるもの

北村 泰介 北村 泰介
路線変更後、リポビタンDのCMキャラクターとして登場している三浦知良(提供・大正製薬)
路線変更後、リポビタンDのCMキャラクターとして登場している三浦知良(提供・大正製薬)

 その変化は、協調性を重んじる20代の若者をターゲットにしたことにあった。

 同社マーケティング本部では「崖を昇り、汗や筋肉をメインに打ち出していたCMはインパクトがあって多くの人の印象に残っているのですが、かなり究極的なシーンで現実と離れてしまった。特に若い人には『自分たちと違う』というギャップが生まれつつあったのでテイストを変えました」と明かす。さらに「カズさんは『夢をかなえた人』、大谷選手は『これから夢をつかもうとしている人』として若い人の象徴的な存在にした。ブランドへの好意度や購入意向が上がってきている」と手応えを示した。

 現在は三浦のみメインキャラクターとして続投し、昨年は人気ユーチューバーのヒカキンとも共演。同社は「個ではなく、みんなと一緒に頑張ることが今の若い人の中ではキーワードになっています」と説明。ヒカキン登場のCMでは、三浦が「ファイト」と言った後、ユーチューバー集団が一斉に「イッパーツ」と合いの手を入れる構成になっていた。

 危機一髪シリーズでは、崖を登る前に飲むのではなく、目標を達成した後で飲んでいたのは当時の効能・効果が「肉体疲労時の栄養補給」だったからだが、今年4月から「疲労の回復・予防」という効能が認められ、今なら崖に登る前に飲むシーンもOKとなる。

 しかし、時代は逆戻りできない。極限に挑む冒険よりも、堅実で協調性を重んじる若者が主流となった今、あの超人的なCMの世界観は一つの時代の記憶とし封印されていくのかもしれない。

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