昭和40年代に国民的な人気を博したTBS系ドラマ「キイハンター」のレギュラーだった女優・大川栄子が15日、NPО法人日本ライフナビゲーター協会プロ1級講師として、初の著書「女優の教えるスターへの道~自分らしく生きる『星とアロマ』」を出版した。
石坂浩二の秘書役で「平四郎危機一髪」に出演後、同番組の後枠だった「キイハンター」に抜てきされ、成城大3年になる1968年4月に放送開始。丹波哲郎、野際陽子、千葉真一、谷隼人と初回からのメンバー5人の一員である〝記憶の天才〟谷口ユミ役で人気を博した。大学卒業までの最初の2年間は学業と両立させ、野際に現場でフランス語の宿題を教えてもらったこともあったという。
毎週土曜夜9時からの放送。ザ・ドリフターズの「8時だョ!全員集合」からチャンネルを変えずに見ていた小学生のファンも多く、自宅に押し掛けた子供たちにサインをせがまれたこともあった。73年まで5年間も続いたドラマは最盛期で40%近い視聴率をマーク。大川は全262話中、最多の237話に登場している。
「丹波さんの貫禄、野際さんの知的でおしゃれなかっこよさ、千葉さんのアクション、私と谷君はコミカル編…と、各キャラクターの回によって作風が違って飽きさせなかった。丹波さんは全くセリフを覚えてこられなくて『今度はどんな話なんだ?』って感じなんですけど、ボスとしてのスケールの大きさでその場に存在していた」
メンバーとはプライベートでも仲が良かった。千葉と野際に誘われてよくスキーに行ったという。「お二人は番組が終わって結婚されましたが、私はずっと一緒にいたのに全然気づかなかった。鈍いなと(笑)」。その大川も74年にフジテレビ系ドラマ「東海道姉ちゃん仁義」で共演した俳優・河原崎建三の猛アタックを受けて結婚。2人の息子が40代となった今、08年に山梨県甲州市に構えたセカンドハウスと都内の自宅を夫と共に行き来する日々だ。
近況を語った。「未来学という東洋の易学と西洋の天文学を融合させた学問を勉強し、2009年にいただいた星莉華(セリカ)の名前で1級講師として活動しています」。初の著書については「女優として私が香りと出会い、その魅力とエネルギーに触れた世界を皆様にお届けしたい」と思いを吐露した。
女優として思い入れのあるドラマがある。キイハンターが終了した73年4月から放送されたTBS系「走れ!ケー100」だ。「1年間オールロケで、意思を持った木造機関車ケー100が各都道府県を縦断するという30分ドラマです。私はカメラマン節子役で関わった。当時、お子さんだった方が今もコアなファンでいらして、インターネットの応援サイトを通じて私も交流させていただいています」。現在進行形でファンと触れ合っている。
そして、これまでの歩みを振り返った時、キイハンターの影響力が肌身に染みる。「50年たっても『キイハンターのユミちゃん』って声をかけてくださる番組を持てたことはありがたいです」。人生の中で芯となっているドラマに感謝した。=文中敬称略=
◆大川 栄子(おおかわ・えいこ)1947年12月1日生まれ、福岡県出身。小学校3年時に父の転勤で東京に転居。東映の児童劇団に入り、成城高1年時に高倉健主演の映画「恐喝」で女優デビュー。フジテレビ系「新撰組」など数多くのドラマに出演。現在は、ライフナビゲーター、東京五輪・パラリンピックの「パラアスリート応援チーム」アンバサダー、甲州市観光大使、アロマテラピーアドバイザーなど幅広く活動。趣味はフラダンス。