「自分の店で最初に切るのは親父って決めてました」――茨城県つくば市に床屋「理髪店縁刃雷」をオープンした男性が、最初の客として父親の髪を切る写真をThreadsに投稿したところ、「これは泣けます」「いい顔してますね」と7000件を超えるいいねを集めました。
投稿したのは、床屋「理髪店縁刃雷」の店主・早川竜生さん(@mc_nikotama_dynamite)。父親の髪を最初に切ると決めていた背景には、以前からの約束がありました。父親は昔から通っていた床屋があり、早川さんも小さいころはそこで髪を切ってもらっていたそうです。その後、早川さんが理容師となった際にも、父親は「いつも行っている床屋の売り上げが下がってしまうから、俺は大丈夫」と髪を切られるのを毎回断っていたといいます。
そこで早川さんは「じゃあ、いつか自分で店を出した時は切らせてね」と伝えました。父親の答えは「まぁその時は」。軽い返事でしたが、早川さんにとっては心に残る約束になりました。
実際にハサミを入れた瞬間、「ここまで育ててくれてありがとう」と強く思ったそうです。ただ、恥ずかしくてその言葉は本人に伝えられませんでした。緊張はなかったのかと聞くと、「正直1ミリもしなかったです。自信満々でした!」ときっぱり。その自信の根底には、父親からもらった言葉がありました。子どもの頃、バスケの練習を休みたくなって「今日は休んでいいかな?」と聞いた時、返ってきたのは「いいんじゃない?普通でよければ」。
「"普通"が嫌だったので、『いや、やったるわ』と強く思ったのを覚えています。東京で修行していた時期にも、妥協しそうになるたびにこの言葉を思い出していました。そんなこともあり、最初のスタートが親父のカットだったら、心のムズムズが絶対にない。その後のお客様には全力でいける!と強く思っていました」
店づくりでは和の要素を大切にしたそう。アメリカのカルチャーが強いバーバーショップが多い中、日本や和の雰囲気が好きだったことから、提灯を使った特注のサインポールや大衆演劇のステージで使われていた松の木の幕を取り入れるなど、自分らしい空間にこだわりました。カット席の間に置かれた提灯には店名のほか、座右の銘である「花には蝶」という言葉も入れています。
「花には蝶が集まるように、普段発する言葉も含めて、蝶が寄ってくるような人になりたいなと思ったので、その言葉を選びました」
投稿には「お父様もかなりうれしいはずです」「理想の親子」「素敵だ」といった声が多く届きました。カット後の父親の反応は「うんオッケー」と素っ気ないものでしたが、早川さんは「予想通りです。きっと心の中では喜んでくれているんだろうなと思いました」と受け止めています。今回の経験を踏まえて、早川さんは今後の目標を次のように語ります。
「ただ毎日全力でお客様と向き合って、かっこいいを作り続けた先に見えてくるものがあるんじゃないかなと思います」