「残酷」を名乗るマラソン大会、全く残酷ではない説 兵庫の名物大会ルポ

黒川 裕生 黒川 裕生

 全長24km、高低差408mという山間を走る険しいコースゆえ、「残酷」を自称するマラソン大会が、兵庫県北部の香美町小代(おじろ)区で毎年6月に開かれている。その名も「みかた残酷マラソン全国大会」。山に囲まれた人口2千人の集落に、この日は全国から3千人ものランナーがわざわざ苦しい思いを味わうために押し寄せる。聞けば、「残酷」という言葉とは裏腹に、住民のもてなしが最高に温かく、コースがどんなにしんどくても病みつきになるのだとか。フルマラソンの完走経験2回、10km部門完走1回という微妙なランニング経歴を持つ記者が挑戦してみた。

 香美町小代区は、神戸や大阪から車で概ね2時間半。周囲は見渡す限り山、山、山の長閑な町で、区内にコンビニは1軒もない。「日本で最も美しい村」連合に兵庫県で唯一加盟しているほか、神戸ビーフの元となる但馬牛の聖地として知る人ぞ知る地域でもある。大会は今年で27回目。コースは山道や各集落を縫うように設けられており、厳しい傾斜とうねりが特徴だ。

 午前9時、中学校裏の細い町道を埋め尽くしたランナーが一斉にスタート。沿道では住民たちが「行ってらっしゃい」と笑顔で手を振り、ずらりと並んだ地元の中高生たちもハイタッチで見送ってくれるので、「来てよかった…」と早くも胸が熱くなってしまった。ありがとうございます!

 だが平坦な道はすぐに終わり、無情にも先の見えない山の中へ。てき面に足が重くなる。「こんなもん、人間が走る傾斜ちゃうやろ!」と俯いて歩き始めるランナーが続出。なるほどこれが残酷か、と感心し始めた頃、上の方から歌手高石ともやさんの歌声が聞こえてきた。

 高石さんは国内外の大会に出場するランナーとしても知られ、残酷マラソンには毎年ゲストとして前夜祭から登場。本番では急峻な山道の途中に待機し、ランナーを歌で励ましているのだ。ありがとうございます!

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