インディーズ映画ながら、2018年の日本映画界に旋風を巻き起こした「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)の後日談を描いたスピンオフ作品「ハリウッド大作戦!」が、神戸の元町映画館で上映されている(7日まで)。2日には、神戸出身でこの2本に出演している俳優の曽我真臣さん(36)が舞台挨拶に登場。カメ止め公開時には100日以上連続で舞台挨拶をこなし、草の根運動で盛り上げに貢献したことで知られる功労者だ。「カメ止め関連で、関西で舞台挨拶するのは多分これが最後」と話す曽我さんに、怒涛の1年を振り返るインタビューを実施した。
曽我さんは地元の甲南大学時代、映研に所属。ここで演技や制作の面白さに目覚め、卒業後も大阪で働きながら芸能事務所にも入っていたという。4年ほど働いた後、一念発起して上京。フリーの俳優として活動を始めた。
カメ止めには当初、エキストラとして参加した。だが、数年前に上田監督の作品に出演していた縁もあり、急遽、台詞のあるテレビ局員の役をもらえることになったという。ただ、出演時間は1分ほど。「リアルっすねー」という一言で存在感を示したとはいえ、「カメ止めに出ていた俳優」と言われても、もしかするとピンとこない人の方が多いかもしれない。
「舞台挨拶に立っても、最初の頃は『誰やねん』という感じで本当に反応が薄かったですね。途中で出て行かれたこともあります」
作品内の自身の立ち位置については、曽我さんも痛いほど自覚している。もともとは劇場公開の予定はなかったが、お披露目上映での観客の熱い反応に、出演者もスタッフも「これはひょっとするとひょっとするかも」と手応えを感じるようになった作品だ。曽我さんも「自分はそんなに出ていないけど、なんとか盛り上げに一役買いたい。カメ止めには、それだけの何かを感じた」と振り返る。出演者というよりは、「宣伝のサポート役」という感覚だったそうだ。
東京の2館で封切られると口コミで評判を呼び、上映館が全国に拡大。次第に社会現象の様相を呈していく中、曽我さんは139日間劇場に通い続け、舞台挨拶には103日連続で立った。「とにかく自分の話をせず、見に来てくれたお客さんが聞きたいであろう撮影の裏話や、パンフレットの購買につながるような話を心掛けました」。舞台挨拶を1日に複数回こなす日もあったため、舞台に立った回数は計200~300回にも上るという。東京だけでなく、上映が決まった大阪や兵庫、名古屋などの劇場にも直接コンタクトを取り、どんどん足を運んだ。
この地道な取り組みはTwitterなどを通じて知られるようになり、ついには上田監督らが曽我さんに感謝を伝えるドッキリCMが大正製薬の提供で撮影されるなど、曽我さんの注目度も急上昇。だがそうした状況に、曽我さんの心情は複雑だったという。