タイ発のポスト「カメ止め」 ミニシアター広報が人気の理由を探る

宮本 裕也 宮本 裕也
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(C)GDH 559 CO.,LTD.All rights reserved.
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(C)GDH 559 CO.,LTD.All rights reserved.

 「カメ止め」ブームを起こした話題作「カメラを止めるな!」(監督・上田慎一郎/2017年)は劇場公開2館から始まるとSNSによる口コミで広がり、全国200館以上で上映された。私が勤めている神戸の小さな劇場でも連日立ち見が出るほど大盛況で「ミニシアター界の救世主」とも呼ばれている。この「カメ止め」に続き、ミニシアター発でヒットしているのがタイからやってきた「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(原題・Chalard Games Goeng/2017年/タイ/タイ語/130分/字幕翻訳・小田代和子/監修・高杉美和)だ。人気の理由を探ってみた。

「カメ止め」ブームとは

 本作は中国で実際に起きた集団不正入試事件をモチーフにしている。カンニングというスリリングで刹那的な展開の学園ドラマだ。しかしそれだけでは、本作がヒットした理由として不十分だろう。

 ここで「カメ止め」ブームをおさらいしたい。ヒットにはSNSの存在が不可欠だった。映画を観た人が「カメ止め!」ポーズで撮影した写真をSNS上に公開。若者を中心に、それを観たフォロワーが映画鑑賞後に真似するなどして爆発的に広がった。「バッド・ジーニアス」でも似たような現象が起き、普段は映画館で映画を観ないような若い世代(特に10~20代)が、こぞって劇場に足を運んでいる。

 劇中ではおなじみのLINEが効果的に使われる。「ポォン」という独特の通知音とともに、海外から送られてくる回答、返信。この音が聞こえれば何かが動く-。「普段なじみあるSNSを使ってヤバイことをしている」そのハラハラ感が若者に受けたのではないか。SNS上でも、普段映画を観ないような人たちが「ハラハラした」「こんなスタイリッシュなカンニングみたことない」などと呟いている。

 本作にテレビCMを打つような予算もなかったし、有名な俳優も出演していない。しかし、今回のようにSNSで世間に広まると、書き込みを見て自分も観たい→観る→おもしろいと発信→フォロワーがその感想を見る→観たくなる→観る→発信する-のループが繰り返される。

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