なぜ「富岳」は微妙な名称なのか 2021年稼働のスパコン「京」後継機

山本 学 山本 学

 そうした理研の態度がなぜ微妙だったのかというと、「富岳」を理研と共同で開発するのが富士通だからだ。富岳は富士の異名なので、巨額の国費を投入するプロジェクトなのに富士通の広告みたいな名前を付けるのはどうか、という人が現れてもおかしくはない。せっかくの新名称の記者会見なのだから、そうした誤解を解いておく絶好の機会だったはず。あるいは「富士」という直接的な名前を付けなかったのが見識なのだとすれば、ひとこと触れておくのが得策だったのではないだろうか。

 スーパーコンピューターは見た目が山のように大きいことから、海外でも山の名前をつけがちだ。サミット(英語で頂上)、シエラ(スペイン語で山脈)といった山に関する名前や、アルプス山脈にあるピーツ・ダイントのように、特定の山の名前を付けたコンピューターもある。だから富士山の名前を付けたくなるのは分かる。しかし応募が多かった名称は京の1000倍を示す「垓(がい)」のほか「雅(みやび)」「極(ごく)」といった、「京」から連想されそうな名前だったという。理研の記者会見には、せっかく松本紘理事長も出席したのだから、数ある公募の中から理研が選んだ名称「富岳」への思い入れを、もっと語ってほしかった。

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