1983年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載された漫画『北斗の拳』(原作:武論尊、作画:原哲夫)では、ファンの間で一番強いキャラクターは誰かという議論がたびたび繰り広げられます。その際、「病になっていなければトキが最強」という意見が多くのファンから支持されているようです。果たしてこの意見は本当なのでしょうか。
そもそもトキとは、北斗神拳伝承者を争う北斗4兄弟のひとり(残りはラオウ・ジャギ・ケンシロウ)で、一時は次期北斗神拳伝承者と目されるほどの実力者でした。しかし核戦争が勃発した際に、ケンシロウとユリアを守るために死の灰を浴び、病を抱えることになったため伝承者の道を断念しています。
その結果、同作の主人公であるケンシロウが北斗神拳伝承者に選ばれるのですが、これに異を唱えたのが4兄弟のひとり・ジャギでした。彼はケンシロウを逆恨みするあまり、彼のライバルである南斗孤鷲拳伝承者のシンを唆し、ユリアを強奪させるのでした。
もしトキが北斗神拳伝承者になっていたら、コミックス6巻「伝説をつくる男たち!の巻」でケンシロウが「あのジャギでさえも認めていた」と語っていたことから、ジャギもその結果を受けいれて、暴挙に出ることはなかったと考えます。
またトキの実兄でもあるラオウもコミックス12巻「永訣の時!の巻」のなかで、「病をえず柔の拳ならばおれに勝てたかもしれぬ」と話しています。であれば、トキが病になっていなければ、ラオウの拳は封じられ拳王軍が作られることもなかったでしょう。
拳王軍が作られなければ、南斗紅鶴拳伝承者・ユダが拳王軍と結託することもなく、南斗六星拳が分裂することもありません。したがって、大きな争いも生じることなく平和が訪れたはずと考えられます。
しかし、ここで問題が発生します。ケンシロウはシンやラオウといった強敵との戦いを経て、乱世を救う真の救世主へと成長していきましたが、平和な時代のトキは強敵と戦うことなく、ケンシロウほど成長することはないでしょう。
そんな状態で、もしも修羅の国から第一の羅将である実の兄・カイオウが攻め込んできたら、トキはカイオウに勝てるのでしょうか。カイオウはケンシロウですら1度敗北する程の強者であることや、ケンシロウがカイオウを倒すために手に入れた北斗神拳創始者の力は、ケンシロウにしか手に入れることができない力であることから、トキはカイオウに勝てないと考えられます。
以上の観点から、筆者はトキが病でなかった場合、最強となる人物はカイオウであると結論づけました。このように読者が自由に「もしも」の世界を考察できるのは、それだけ『北斗の拳』の奥が深いからなのでしょう。生誕40周年を記念した新作アニメの放送を控えている今、改めて同作の奥深さに触れてみてはいかがでしょうか。