「分度」とは収入に応じた基準で、状況をわきまえて生活すること。ただ、経済格差が広がる今の日本で、この「分度」という言葉は「自分の収入に応じた生活で我慢しなさい」と、企業側にとっての都合の良い理論になりはしないか。そこを五十嵐氏に問うた。
同氏は「二宮金次郎が唱える『分度』とは、ただ単に『収入に応じた生活をしろ』というものではないと思っています。収入に見合った支出をなすために、生活の無駄をなくし、1年の支出を計画的に行うことにより必ず余分が生まれることを求めた。その余分を生み出すことが『分度』の大切な点だと思います」と説明。「その余分を積み上げて、まだ立ち直ることができない人々への再建資金にあてたのです。これが金次郎の唱える『分度』と『推譲』だと思います」と補足した。
渋沢は天保年間の1840年生まれ。16歳まで二宮尊徳は生きていた。分度の精神は、江戸末期の同じ空気を吸う中で引き継がれていたのかもしれない。