岸田政権の目玉政策のひとつである経済安全保障法案が間もなく国会で審議される予定だが、その策定責任者だった藤井敏彦前経済安保法制準備室室長が3月9日に辞職した。
週刊文春は2月17日号で、藤井氏が朝日新聞の女性記者の自宅マンションを訪れたり、無届で講演などを行っていたことを報道。また出入りの管理が非常に厳しい自分のオフィスで、講演で知り合った企業の女性職員と会っていたことや、朝日新聞の女性記者以外の女性との関係も報じていた。
「同法を作る上での重要な情報が漏洩していないか。あるいは何かしらの不当な関与があったのではないか―」
週刊文春の報道後に立憲民主党はヒアリングを開き、経済産業省や内閣府など関係省庁に説明を求めたが、関係省庁は「調査中」を理由に本人の出頭その他に応じなかった。しかし藤井氏には3月9日に「停職12か月」の処分が出され、本人は即座に辞職願を提出。退職金から停職処分に伴う1年分の収入と無届で講演などで得た収入分の計約3400万円を自主返納したという。
あっという間に辞職してしまった藤井氏は、もう公務員ではなくひとりの私人になったため、説明のために国会に呼ばれなくてすむことになる。しかも退職金のうちかなりの部分を返納して“反省”を示したのだから、無事に放免されると思っていたのだろうが……。
しかし同日夕方に立憲民主党が開催したヒアリングに参加し、「懲戒処分について」と題された報告書を読み込んでいると、信じられない一文が目に入った!
「国家安全保障局におけるセクシャルハラスメント」
国家安全保障局の調査によれば、被処分者は、国家安全保障局在籍時に、内閣官房所属職員に対し、複数回にわたり、性的な内容を含むショートメールを送信していたことが確認された。
これは藤井氏が令和元年10月31日から令和4年2月8日まで、国家安全保障局に在籍していた時に確認された6つの「非違行為」のうち、最後に示されたものだ。
しかもどうやら“被害者”は1人だけではないようで、また女性職員だけではなく男性職員も“セクハラメール”を受けていたとの噂すらあって……。
すでに雇用主に対してパワハラ防止の措置を命じる「女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律」が令和元年6月に公布され、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正された。にもかかわらず、つまらないハラスメントが総理大臣のおひざ元で行われていたという事実こそ、国家の危機ではないか。
ということで、日本の経済を救うべく、鳴り物入りの経済安全保障法制だったはずが、生みの親の不祥事で、国会での審議前にすっかりとケチがついてしまった。藤井氏の罪は重い。