野良猫にエサをあげていたら、猫が集まってきて、子猫も産まれてにっちもさっちもいかなくなった。庭にはキャリーケースが山積みにされ、猫たちが閉じ込められていた。
高齢者による多頭飼育崩壊
2013年2月、静岡県で猫の保護活動をしている植松さんのもとに、ボランティア仲間から連絡が来た。高齢の母と息子で借家住まいしている人が、猫の多頭飼育をしていて、崩壊寸前だという。
高齢の母は、野良猫にエサをあげていたのだが、不妊手術をしていなかったので、どんどん猫が増えていった。近所から糞尿被害の苦情が来たが、息子が猫嫌いなので部屋の中に入れるわけにもいかず、庭にキャリーケースを積んで猫を入れっぱなしにしていた。
ある日、その家の近くを散歩していた人が、あまりにもたくさんの猫の鳴き声がするのに気づき、恐る恐る中をのぞいてみたら、キャリーケースが山のように積まれているのを発見したという。
キャリーケースの中で身動きできなかった猫たち
植松さんたちが猫の保護に行くと、猫たちは全部で28匹いた。キャリーケースの中で身動きが取れないような状態で、糞尿にまみれて異臭を放っていた。
「エサは食べていたようで、ガリガリにやせているということはなかったのですが、明らかに品質の悪いフードを食べさせていたのが分かりました。でも、比較的人にはなれていたんです」
植松さんは3匹の猫を預かり、お湯で湿らせたタオルで臭いが取れるまで毎日身体をふいた。2年後に2匹は里親が決まったが、残った茶太郎くんは、一筋縄ではいかなかった。
植松さんが大好きな茶太郎くん
最後まで残った茶太郎くん(推定7歳)にも、ついに里親希望者が現れた。無事新生活が始まると思われたが、茶太郎くんは譲渡先で毎日夜になるとニャアニャア鳴き叫んだ。
「里親さんは1カ月くらい我慢して様子を見たり、私に相談してくれたりしたんですが、どうしても茶太郎が鳴き続けるので夜も眠れない状態が続き、これは飼えるような状態ではない、可愛いけど返したいと言われたて、茶太郎は戻ってきたんです」
ところが不思議なもので、植松さんのところに戻ってきた茶太郎くんは、ピタリと鳴き止んだ。
「これは、人に譲渡するのは無理だと思いました。でも、人が大好きなので、自分からスリスリしてきて、お腹を見せてひっくり返ることもあるんですよ」
人には甘えん坊でおちゃめな茶太郎くんだが、同居している猫たちの間では頼れるボス的な存在だ。逆らうと怒るが、みんなのまとめ役だという。