水谷さんがすごいのはここからで、その膨大なメッセージにひとつひとつ対応。当然昼間の仕事もこなしながら、古いものから順に「来店の順番が来ました」と返信しては、毎晩一組の客を迎えるという気が遠くなるような作業をこつこつと続け、現在、ようやく15年6月17日までの予約分を消化し終えたところだという。
「あの年は『ごぶごぶ』が別の地方で再放送されるたびに、また予約がどっと増えるということの繰り返しで、累計で5000件くらいになりました。6月17日は、1日で480件くらい予約が来た日なんです。この大きな山を乗り越えたので、今は少し気持ちが楽になりましたよ」
後で調べて驚いたのだが、この問題の「6月17日」、3年前のスズキナオさんの記事の中で、当時まだ案内をしている段階の日付として言及されていた。予約を全部さばくには一体あとどれほどの歳月を要するのだろう…。正直、投げ出したくなることもありますよね?
「ありません。求められ、させていただける仕事があることをありがたく思っています」
す、すごすぎる…。
16年には別の部屋も借りてスープ工房を拡大。さらに18年11月からは、一晩に二組の来店を受け入れられるようになった。通販用の梱包などを手伝ってくれる人も現れ、少しずつだが予約をこなすスピードは上がっている。実際、通販に関しては今は1~2カ月で購入できる。一方、来店は、今から予約すると4年ほど待つことになりそうだという。
「決して今の形がベストだとは思っていません。昼間の仕事は少しずつ後進に引き継いで、いずれ近いうちに店に専念する日が来るでしょう。きっと、ランチ営業もできるようになると思いますよ」
「3年も4年も待って遠いところから来てくださる人を、がっかりさせるわけにはいかない。自分の好きな味を食べて喜んでもらいたいという思いは、スープを作り始めたときから全く変わっていません」